表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
229/734

227話・推定50億の取り引き2

 ヒナの目的は勇者自治区の軍事力の強化。

 英雄の超人的な能力に頼らない、普通の国家をつくること。


 そのために錬金術師を抱き込んで、スキル結晶の量産化を画策している。

 俺の知り合いの錬金術師アンナ・ハイムへの紹介料は1億ゼニル。

 ヒナが交渉に成功したら、ボーナスでもう1億の計2億の取り引き。


挿絵(By みてみん)


 エルマは目をゼニルにしているが、俺はここから、ひと勝負仕掛けるつもりだ。


「分かった。でも、紹介はできない」

「なぜ? まさか直行君も、ママみたいな平和主義者ってことはないでしょう」


 ヒナは信じられないといった面持ちだ。


 ここからが勝負どころだ。

 ただの紹介者で終わっては、面白くない。


 俺は、もっともらしい理由を考えてみる。


「ヒナちゃんさんの計画は、錬金術師あってのものだ。アンナに承認されないと詰むよね」

「そうね。でも、ヒナが絶対に何とかしてみせる。これは自治区の国防の要だから」


 ヒナの自信は、おそらく圧倒的な魔力での「力づく」「脅し」という選択肢も入っていると思われる。

 だけど、それではアンナは動かない……と、思う。

 

「アンナは独特の倫理観と感性で生きている。ヒナちゃんさんの言い方だと、まず間違いなく彼女を説得できない。十中八九ケンカ別れだ」

「本当に?」

「絶対にムリだな。怒らせて法王庁に報告されたらマズいよ」


 これは半分、俺のハッタリでもある。

 たぶんアンナは金で動く。

 法王庁に報告するような人でもない。

 それをヒナに悟られてもいけない。


 俺に2億も用意できるという事は、少なくともその数十倍、50億からの予算は用意してあるはずだ。

 何しろスキル結晶の量産化のためには、それなりの設備が必要となる。

 

 俺は頭をフル回転させて、ヒナの計画にガッツリと食い込んで金儲けをする策を考える。

 

「ママはどう思う? 彼女とは会ったことあるんでしょ? 本当にヒナじゃ説得できないと思う?」

「う~ん。独特な価値観の人だからねー。わたしなんか初対面の時に変な薬品かけられたし……。ハッキリ言って、厳しいと思う。直行くんに任せるのもアリだと思うわ」


 小夜子の答え(ナイスアシスト!)に、ヒナは考えあぐねている様子だった。


「……直行君はどう思う?」

「アンナの説得は、俺に一任してほしい。そして施設はロンレア領に建設させてほしい。その方がリスクを軽減できる」


 俺は、不敵に笑って見せた。

 ヒナも同じように笑う。


「自治区に建てさせてはくれないわけ?」

「勇者自治区でスキル結晶を量産化するのは悪手だと思う。下手したら法王庁とクロノ王国の両方が動き出す世界大戦ものだ」

「だけど、あなたのところで量産して、別のところに横流ししないとも限らないでしょう」

「前科あるもんねー。直行クン」

 

 アイカに痛いところを突かれて、俺は苦笑いだ。


「だったら専属契約を結ばないか? 料金はその分割増しになるけど。ヒナちゃんさんは、欲しいスキル結晶をリストに入れてくれたら、俺たちの領地で生産して取引しよう。野菜のように定額制でもいいよ」


 思い切って俺は吹っ掛けてみる。

 ヒナは一瞬、してやられた! という表情になったが、すぐに冷静な顔で提案する。


「建設の経費はヒナたちが持つ。というか、ロンレア領を借りて自治区の施設を建てるというのはどう? 専属契約の代わりとして」

「ハコの件はそれで良いとしても、アンナはマジで超がつく変人だ。そちらが手配した人員ではアンナの御眼鏡にかなうとは限らない」

「ふーん。直行君には錬金術師の助手が務まるほどの人材を手配できると?」

「ああ。一人だけど、心当たりがある。その人物を、中間管理職として間に入れてほしい」


 ……心当たりなどないが。

 俺としては人材云々というより、誰かクッションが入ればそれでいい。


 うまくすれば、ロンレア家直属の錬金術師を抱え込む布石になるかも知れない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ