最近、弟が拾った子猫のことについて振り回されてる。
11月2日。
私は、大好きな声優さんの誕生日で、その声を聞く為にゲームをしようと浮かれていた。
最近、芸の幅のある彼は悪役や主人公と似た能力を持っていても、考え方の違う、声は爽やかだが教え諭す役が多い。
昔はちなみに、女性の役も演じられたし、竹中半兵衛や趙雲、劉備など歴史物のイケメンを演じたり、私の好きなゲームの『遙かなる時空の中で……』の1〜4で攻略対象を演じられた時は、萌えた。
あぁ、違う。
石田彰さんのお話ではない。
この日、弟にマンションの下にいると電話で呼ばれ、降りていくと、
「姉ちゃん……どうしようか?」
と言う。
どうしようかも何も、私は掃除したいし、片付いたら冬物を出そうと考えていた。
「何?」
「これ、助手席……」
運転席側から見ると、白と黒の小さい猫がぐったりしていた。
しかも左目の横が陥没し、目を細め、鼻血が出ていた。
「どしたん?」
「ここの近くの交差点から細い道に入った歩道でぐったりしとった。やっぱりそのままにしとけんけん、拾ったんやけど……姉ちゃん。一緒に帰ってや。おとうが怖い」
「……うちも怖いわ!うちが拾って帰って、何度怒られたか分かっとるやろ!」
「でも、ユウ連れて帰ったやん」
うちの家族はユエさんをユウという。
「保健所でもう死を待つだけやったもん!辛すぎるよ!」
「あぁぁ!姉貴泣かんでいい!はい。猫よろしく」
そのまま乗せられ、実家の扉を開けた。
当然父は怒ったが、私が怪我をしていること、一回止まっていた鼻血が又出ていることを説明すると、
「温めてやって寝かせぇや」
と父に教わり、段ボールとタオルケットの裂いたもの、トイレには新聞紙を割いたものを用意する。
さすがは、幼い頃から実家にいた頃から、猫と育った父である。
でも、父は猫より犬派らしく、触りたがらなかった。
一応、警察に怪我をした猫を預かっていると連絡を入れたが、今すぐに家にお伺いしますと言われた。
夜も11時。頼むから来て欲しくない。実家の犬が興奮するし、弱っている猫も心配だった。
明日は祝日だが病院に連れて行くことにして、火曜日に伺って拾得物届を出すからと連絡をした。
翌日、動物病院に行くと体重は約2キロ。
強い打撲で脳しんとうと左目が傷ついているのと、鼻血で、化膿止めを処方された。
4000円。
そして、餌とトイレ砂を購入し、帰った。
一応一週間分、千円ほど。
そうして火曜日、警察署に行くととんでもないことを言われた。
拾得物届を出すと、引き取った猫は主人が見つかるまで、3ヶ月間は拾った弟の家で面倒を見るのだそうだ。
それに、子猫以外拾得物として認めないのだという。
でも、警察が引き取ってもすぐに保健所に送られ、一週間後殺処分。
拾得物扱いするのも私には納得できないのだが、それ以上に納得できないことがあった。
一昨日と、言っていることはほとんど正反対!
聞いてないことだらけ!
ゾッとして、届けも出さず家族と相談するからと警察署を出た。
その後、病院に行こうと停留所まで歩いていると電話がかかり、
「あ、刹那さんですか。市役所に確認をすると、怪我をしている猫も引き取ってくれるそうです。子猫と同じ扱いになります。動物愛護センターの番号をお伝えしますので、かけてみてください」
とかけてみると、保健所に繋がった。
「何で?」
不信感にかられつつ説明すると、どこで見つけたかになり、
「〜の電車の〇〇停留所から、北の道に進んだコンビニの近所です」
と繰り返すのに、
「えっと、△△停留所の近くのスーパーの通りを走っていると右?左?」
と言う言葉に絶句。
はぁぁ?あんたが言ってるのは、地元のスーパー。
しかも、電車の停留所の名前も違う!
そこは、現場よりもっと西!
それに、私はコンビニと言った!
その為繰り返す。
「ですから!電車の〇〇停留所から北に登るんです!東じゃないです!そこにコンビニあるでしょう!それに△△停留所じゃなく、〇〇停留所です!」
「えっ?……あぁ!ありました。えーと、地図どこだっけ……××町ですかね〜どこだろう?コンビニ、コンビニ……」
「Fコンビニです」
「Sじゃないの?Fはどこ……」
「十字路の角にありますよね?」
「あ、あった!」
あんた、市役所職員だろうが!
地図も読めんのか!
と突っ込みたくなるのを我慢する。
すると、
「あ、そう言えば、ここは事務所じゃないんです。電話番号お伝えしますので、かけ直してください」
と言われてしまった。
はぁぁ?またかける?
ここまで説明したのに?
30分に一本のバスが、また行ったばかり。
二本も逃したことに泣きそうになりながら、電話をかける。
「えっと、どこで見つけたんでしたっけ?子猫ですか?」
あぁん?またかよ!
又最初から説明を始める羽目になる。
「……で、女の子みたいです。体重は2キロだそうです。拾ったところは〜です!」
「本来、大人の猫は引き取らないんですが、怪我をしてるということなら、今回だけ特別に、本当に特例で引き取りますが、今すぐ連れてきてください。よろしくお願いしますね。それか、元気になったらその場所に返しておいてください」
「はぁぁ?そこに、拾ったところに捨てろって言うんですか?」
「貴方の家で飼えないんだったら、元の場所に捨ててください」
その一言が信じられなかった。
怪我をして弱った猫を拾って面倒見ているだけで、こんなに大変な目にあって、そして最後のセリフがこれ?
「じゃぁ、警察に行ってから連れてきてくださいね」
切れた電話に、口パクで叫んだ。
「い、く、か、よ!病院に行かなきゃ予約遅れてんだから!」
不信感MAXのやりとりが終わった。
そして、ネットでNPOを見つけたのでそこにメールをすると、休みで、翌水曜日にメールが届いた。
『拾った猫が飼えない場合は譲渡会があります。しかし、このNPOの会員になってもらう必要があります。そのことについては、ネットに詳しく書いてあるのでよく読んで下さい。入会すると、ネットに写真を投稿できます』
サイトをじっくりみてみると、
『会員費は3000円から。譲渡したいペットは、動物病院でいくつかの注射や検査、そして最低二週間は家猫などとも接触させず、外に出さないように。譲渡会にはケージを用意してほしい。そして動物達が寒さや暑さに対応できないので、その準備をしてきてほしい。水、餌、ウェットティッシュ、ペットシーツも必ず持参。譲渡会のある日は、開催時間より早く来て掃除をしてほしい』
と言ったようなことを書いてあった。
実家に戻り説明すると、母と妹は遠い目をし、弟は頷きながら、
「じゃぁ、飼うた方がええなぁ……じゃぁ、つばき飼おっか」
「あほぅ!」
ベシッ!
実家にも裁縫道具を置いている私は、長定規で叩く。
「猫アレルギーの人がおるがね!来た時に帰ってなんて言えまいがね!」
「やけん、上に上がらんといて言えばいいやん」
「あほぅ!」
もう一発浴びせる。
「猫の毛は服やなんかにすぐに着くんで!あんたの服についてるのにそのまま降りたら、家中に広がるわ!」
「ほんならどうするんで?姉ちゃんもあそこに捨てぇ言うんか?俺は嫌ぞ!それやったら飼う!」
「面倒みれん者がよう言うわ!クゥの面倒もみずにおって、よう言うたな。うちは、ユエさんを面倒見るためにやりよる。ユエさんが死んだらこの家に戻らん。ユエさんがこの辺りが好きやけん、週末散歩に戻っとる。ユエさんが死んだら、この家に戻らん。つばきをうちに見てもらおうとおもとるやろうけど、大間違いや!母さんもひなもあんたも勝手や!人を何でもする小間使いみたいに思うなや!本当はここまでするのは本当は自分やろが!出来もせんと、よう飼う言えるわ!猫は家に着く。あんたは自分勝手や、構いもせんとおったら、逃げるで」
今度は角を弟に突きつけた。
「面倒見きれん、しかも手続きもうちに投げといてよう飼い主や言えるわ。Twitterで飼い主探す。それでええな?文句は言わせん」
「っ……」
「あんたの生活態度が招いたことや。ギャンブルやめるって言うたのに辞めれんし借金しとるんやろ?何考えとんで!それに、犬を飼ってもあんなに言うたのに散歩もろくに行かん、タバコもやめる言うたのに辞めれん、中途半端なんや。それが猫を飼う?ちゃんちゃらおかしいわ。ボケェ」
ポンポン手に打ち付ける。
「はい!という事です。つばきは個人的に飼い主探す。あんたも会社の人で飼える人探しや。うちもTwitterで広げるわ。金はかけれん。ほんじゃな」
猫を拾って、一番わりを食うのが自分だと思い知った数日間でした。