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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
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第78話 精いっぱいのへらず口

「ジル・ド・レ! ラ・イール!」


「セイ、ぼくは大丈夫です。それよりジャンヌを……」

「ああ、セイ殿、こんなのはかすり傷じゃ」


「は? おまえたちがあたくしの攻撃をふせいだわけじゃあるまい」

 ハマリエルが苛立ちをあらわにした。

「そこの未来人の力で、ビームをはね返されただけだ……」


「だが、今度はそうはいかない。さきほどあたくしの身体を拘束して、危険な目にあわせてくれたお礼もせねばならないからね」

 リアムは手を前につっぱったまま、口元をにやつかせた。

「ヤバいくらい焦ったろ。あともうすこし力がだせたら、セイがあんたの首、斬り落してたんだがねぇ」

 精いっぱいのへらず口だったが、あきらかに弱々しかった。


「ああ、危なかったわ。こんなに追い詰められたのははじめて。だから……」

 その瞬間、ハマリエルは弾丸のようなスピードで、リアムのふところに飛び込んでいた。


「きさまの命で落とし前をつけてもらうわ」


 セイにはハマリエルのことばは、耳にはいってこなかった。カッと目を見開く。セイが血の気がひくのを感じた。


 目の前の光景が信じられなかった。


 ハマリエルが突き出した右手から、華々しいビームが放たれたかと思うと、その腕はリアムのお腹のど真ん中を突き抜けていた。

「リアム!」

 セイが叫ぶのと同時に、ジャンヌやジル・ド・レたちも一斉に声をあげていた。みな呆然とした表情だった。

「これでこいつは死んだわ」


「いい加減なことを言うな!」

 セイはハマリエルのほうに刀の切っ先をむけながら叫んだ。


「いい加減?」

「ぼくらはこの世界では精神体だ。死ぬなんてこと……」


「死ぬわよ」

 ハマリエルは残酷な笑みを浮かべながら言った。

「さっきも言ったわよね。この世界で死んだら、むこうの世界でも死ぬって。肉体的に死ぬんじゃないわ。精神をやられて廃人になるのよ。植物状態というンだったかしら」

「黙れ! そんなことあるわけ……」

「じゃあ、きさまのからだで試してみたらどうかしら!」


 ハマリエルがリアムのからだを貫いたままの状態で、セイのほうへふりむくと、リアムの背中へ突き出た右手からビームを放ってきた。リアムのからだ越しに撃たれたビームはセイを的確にとらえる弾道だったが、セイはおおきく後方へジャンプしてそれをよけた。

 ハマリエルが突き出した右腕にぶら下がるリアムのからだは、ちからなくボロ布のようにだらりと、垂れ下がったままでピクリともしなかった。


「リアムさん!」

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