第69話 リアム精神集中
リアムは地面に降り立つと、目をとじて精神集中をはじめた。
セイに公言したものの、ハマリエルをほんとうにとめられるか自信がなかった。 あれほどの強敵を欺くことができるだろうか?
セイの怪我の修復のために、すでに精神力をかなり使い果たしている自分では、ハマリエルの攻撃を受けとめることができるか、リアムの自信はおおきく揺らいでいた。
だが——
セイはやれると信じている。
ならばやるしかない。
リアムは空気の層を作りだそうと、手を前に突き出した。
その瞬間、異変に気づいた。
空気が集まってこない?
よく見れば大気が揺らめいていて、目の前の空間に空気の壁が築かれているのはまちがいない。だが、それまでの圧倒的な集約力はない。
「アランソン……いえ、リアム様、どうされました」
あとから追いかけてきていたジャンヌ・ダルクが、馬上から声をかけてきた。
「ああ、ジャンヌちゃん。なんでもないよ」
「なんでもない? わたしには困り果てた顔にしか見えませんよ」
「えーー、そんな変な顔してるかい」
「はい。残念ながら……」
「はは、参ったね」
リアムは笑ってごまかそうとしたが、ジャンヌの真剣な目がそうさせてくれなかった。真実を話してほしい、と懇願するような視線がリアムを射る。
「セイに……セイに援護を頼まれたんだがね。どうやら……弾切れらしい」
「弾切れ?」
「ああ、能力の源が切れかかってるっぽい」
「それはどうしてですか?」
ジャンヌを警護するために一緒についてきたジル・ド・レが尋ねてきた。
「ジル将軍、単純な話さ。ちぃとばかりやられすぎちまった。あいつ強すぎるンでね。それに……いや……不徳のいたすところさ」
「セイに力を分け与えすぎたのですね」
ジャンヌがリアムの目を見すえたまま言った。
「そんなこたぁねえさ。だけど、もちっと出し惜しみしてもよかったかもな」
「リアム殿、それなら休まれたほうが……」
合流してきたラ・イールが心配そうな顔をする。
「ラ・イール。そうはいかねぇのよ。セイはここで決着つけるつもりでね。あいつひとりでどうこうできる相手じゃないから……」
「ですが、リアム殿の力が及ばなければ、セイ殿も危険なのではありませんか?」
「ああ、そうだな……」
リアムはセイが潜む暗闇のほうに目をやった。
「命懸けで精神集中しないとな」




