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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
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第61話 メスを守っていてください

「セイ殿、心配するな。メスは無事じゃ」


「ああ、わたくしたちがしっかりと守っている」

 ラ・イールとル・バタールが声をはずませると、ブーサック元帥ジャン・ド・ブロスが不承不承という形で続いた。

「セイ殿、そなたにとって大事な御仁なのだろう。わしの命に代えても守れ、とラ・ピュセルからの命令でな」

 そのことばにベルトラン・ド・ブーランジイが頭をさげた。 

「元帥、ありがたきお言葉です。メスはわたしにとっても弟分のような者。全力で守っていただき……」

 ブーランジイはことばを詰まらせた。


「みんな、ありがとう。でももうすこしメスを守っていてもらえますか?」

「ああ、どこまでやれるかわからんがね」

 ル・バタールがすこし自嘲気味で答えた。セイは彼がネガティブ思考にとらわれはじめた、と感じた。


「メスが無事なら、ぼくはまだ戦えます」

 手に力を(みなぎ)らせながら、セイは言った。

「あのトラ……ハマリエルを倒してみせます」

「ですが、神の子セイ。リアム様も止められなかったのですよ」

 ジャンヌは悲しみを顔いっぱいに浮かべたまま言った。


 その悲しみが、今の一瞬で残ったフランス兵の多くを失ったことなのか、自分の盾になって死んだ愛馬のことなのかわからなかったが、セイにはジャンヌの沈む気持ちを鼓舞する必要があると感じた。

 ジャンヌの狂ったまでの盲信と、危なっかしい正義こそが、オルレアン解放まで導いた原動力なのだ。こころが沈んだままでいいわけがない。


 セイはわざとらしく力こぶを作る真似をしてみせた。

「ジャンヌ。ぼくは回復した。ほら、これを見て! だから大丈夫……」


「絶対に勝ってみせる!」



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 自分の(ギフト)では太刀打ちできない——


 リアムはゾッとするような現実を受け入れるしかなかった。

 新規にたちあげられる組織、『サイコ・ダイバーズ』の基準では、自分は最上位のSS級相当であると認定されていた。

 だが、それだけの手練れの者が、まったく手が出せない敵が存在するとしたら、そんな階級になんの意味があるというのだろう?


「リアムさん!」

 声のほうへ目を向けると、セイが人間離れしたスピードでこちらへ向ってきていた。


 傷を修復できたようだな。


 リアムは胸をなでおろした。

 そんな余裕などあるはずもなかったが現状、最悪の事態は避けられているだけでも儲けものだと思えた。


「あら、少年。まだ死んでなかったのね」


 ハマリエルが目をほそめた。

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