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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
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第59話 ハマリエル、もう一発撃ってみろよ

 ハマリエルは今まで戦った悪魔とはちがった。


 ほかの悪魔のようにこちらが畏怖するような悪魔然とした姿も、威嚇するような異形な姿もせず、ただの少女の姿のまま、リアムの技や力を受け流していた。


自分の能力はたいしたものではないのではないか——


 何度もその思いがこみあげる。

 

『んな、はずねぇ』


 この世界では自然の属性(エレメント)にかかわる能力(ギフト)を手に入れたものが、絶対的に有利だと言われている。

 自分は「風」「土」「水」「火」の四大エレメントの、『風』属性の派生形を持っていのだ。


 リアムは撃たれた足に精神を集中すると、ぐっと力をかけて立ち上がった。

「ハマリエル、もう一発撃ってみろよ。今度は受けとめてやるからよ」


 ハマリエルが困ったように眉根をよせて笑った。おそろしいほど邪気のない笑顔。からだの周りを、ヘドがでそうなほどの邪気に覆われているにもかかわらず、その笑顔に一瞬こころを許しそうになる。


『あら、一発なんて無粋なことはしませんわ。今のあいだにいっぱい光の矢を作ってましたから、全部受けとめてほしいですわ』


 ハマリエルはくすりと笑って、上空をみあげた。


 いつのまにか陽は落ち満天の夜空が広がっていた。が、まだ夕闇が近づいているくらいにしか思っていなかった。

 空いっぱいに光の矢が浮かんでいた。

 ハマリエルの指から撃ちだされるレーザービームが、矢のようになってびっしりと空を埋め尽くしていた。地上にむけて今か今かと、攻撃の瞬間を待っているようだった。


「わたくしね、まだ能力に制限があるの。魔王様が蘇ってないせいでね」

 ハマリエルは両手を目の前に掲げ、両方のひとさし指を立ててみせた。

「ビーム攻撃はひとさし指からしか出せませんの。しかも長いあいだ出し続けられない。だから細切れに連続して出すしかないの」

「あ、あれは……」

「今、あなたが倒れかけた間に、急いで出したの。光線は出せさえすれば、自在に操ることは可能ですからね」

「そんな……今の間……5秒ほどだったはずだ」

「だからまだ長時間だし続けられなくも、欠点だとは思ってない」


 ハマリエルが邪悪な笑みを浮かべた。

「あなたをこの任務から解放してあげるわ」


 こちらの骨まで凍りつきそうになるほどの、ゾッとする笑い。


「だって、ここにいる全員を排除すれば、あなたはわたしと戦う意味もなくなるでしょ」


 リアムは空にむけて腕をつきあげた。

 空気の層を……とびっきりぶ厚い空気の壁を……

 このオルレアンの地を空気の壁で覆わなければ……


 だが、リアムはわかっていた。

 もしそれがうまくいったとしても、あの光の矢はふせげないことを……


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