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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
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第56話 ジャンヌが死んでしまったらお終いだ

「墜落……」


 ジャンヌはドラゴンが墜落した岸辺のほうへ目を泳がせた。あたりは暗くなって見えにくかったが、ジャンヌの顔は心なしか蒼ざめて見えた。


「心配しないで。彼はすごい能力者だから、無事だと思うよ」


 それは一瞬のまたたきだった。

 セイのからだは脊髄反射的に動いていた。いっさいの躊躇もなく、ジャンヌ・ダルクの前に身をていしていた。

 だれもがなにが起きたかわからずにいた。

 薄暗い夕闇を切り裂いて、空からさした一筋の光線がセイのからだを貫いた。そしてその背後にいたジャンヌの甲冑を破壊していた。

 セイは胸のまんなかを抑えたままゆっくり倒れた。と同時に背後でガチャンという甲冑が地面にぶつかる音を聞いた。


「ジャンヌ!」

 セイはうしろを振り向きながら叫んだが、咽喉の奥から湧きあがってきた血へどに、気道をふさがれ声にならなかった。


 くそぉぉぉ! ジャンヌが死んでしまったら、これでお終いじゃないかぁぁぁぁ


 警戒していたにもかかわらず、それを抑止できなかったことが、セイは悔しかった。

 ぐっと歯を食いしばる。

 すこしでも気をゆるめると、気をうしないそうになる。

 

 精神を集中させろ!

 はやく回復しないと!

 ぼくは彼女を守れない!


 セイはその場に膝をついたまま、自分の胸の穴に精神を集中させた。

 

 やられたのは心臓か?

 それとも肺だけなのか?

 

 目がかすむ。

 

 セイは自分が今までのダイブで、もっとも危機に陥っていることを自覚していた。


------------------------------------------------------------


 セイはかろうじて意識を保っていた。

 光線によって貫かれた箇所を修復するのに精神集中すると、失血や痛みなどのダメージに抗しきれなくなり、意識の糸が切れそうになる。

 セイのからだは跪いたまま、前のめりに倒れ、すでに頭まで地面にこすりつけていた。


 ここで現世に戻るわけにはいかないっ!

 

 頭のまわりでワンワンとした音や声が聞こえる。だれがなにを言っているか、まったくわからない。残響音だけがハウリングしているようにしか聞こえない。

 ときおり、ジャンヌ、アランソンと言っているような声が響いたが、ぼーうっとしてそれが本当なのかもわかない。


 ……っかりして……

 しっかり……


 だれかの手が自分のからだをやさしく揺らす。


『セイ…… しっかり……して……』

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