表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
883/932

第52話 時間はおれがかせぐ!

 間に合わなかった——


 ビームに右胸を貫かれて、セイはうしろにはね飛ばされていた。

 斬り落したはずの左腕から放たれたビームだった。


 ドラゴンの背中の上をごろごろと転がっていく。すぐさまリアムが空気の壁でセイのからだを押しとどめてくれたが、腹と胸を穿(うが)たれたセイはまったく反応できなかった。


「セイっっ! 精神を集中して、傷をその穴を修復するのにつとめろ!。おまえさんの精神力だったら大丈夫だ。なんとでもなる」

 リアムがふらふらと立ち上がりながら言った。


「時間はおれがかせぐ!」


------------------------------------------------------------


 リアムは自分が『ハマリエル』という名前に完全に怖じ気づいていることがわかっていた。

 キリスト教を信仰する者なら、精神世界にダイブして悪魔と戦い続けているものなら、この黄道十二宮に属する存在がどれほど上位者なのかを知っている。

 本来ならこちら側に味方したかもしれない堕天使——

 

 もちろん、今まで同等な脅威と邂逅(かいこう)したこともない。

 それどころか仲間内でそんな話に盛りあがった時も、それほどの高位の悪魔と一生出くわすことはないだろう、と一笑に付されたことさえある。

 

 倒せる、倒せない、という可能性を考えていい相手ではない。

 けっして出くわしてはならない敵なのだ。


 目の前のハマリエルは『処女宮の悪魔』を体現するかのように、むしろ可憐な少女の姿をしている。ふつうならこちらを威嚇するため、異形の化物になったり、人間サイズを越える体躯を誇示してみせるものだ。

 それが少女の姿で現われた——

 

 それだけ己の力に絶対的な自信がある証左だ。


「さぁて…… 空気ごときでどこまで行けるかだな」

 リアムはセイに聞こえないよう呟いた。ちらりの目の端でセイの姿をとらえる。

 セイは苦しそうに顔をしかめながらも、精神を集中させて言いつけどおり、自分のからだの回復に注力しているようだった。


 この少年は無事に現世に戻さないといけない——


 ハマリエルが切られた腕を拾いあげ、元の場所に戻した。その瞬間、切られたことが嘘であったように腕が修復された。


 こっちも速いってかぁ。


 そのとき、リアムはドラゴンが高度を下げていることに気づいた。


 落ちてる——?


 リアムはさきほどセイがドラゴンに、どんな攻撃を仕掛けたのかわかっていなかったが、それが今も効いているのだと理解した。


「ドラゴンが落ちてるぜ。ハマリエル」


 ハマリエルは首をうしろにむけて、ドラゴンの顔のほうに目をやった。

「そのようね。まったく役立たずったらないわ」

「はん、おまえさんの力不足ってことじゃないのかね」

「まぁ、そうとも言えるでしょうね」

 ハマリエルはかるくため息をついた。

「このドラゴンといい、グラスデールといい、わたしの期待を裏切ってくれますわね」


 ハマリエルがうんざりしたような目つきをリアムへむけてから言った。


「まぁいいですわ。役立たずは始末します」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ