第50話 セイ、逃げろ! あいつは強ぇ
ハマリエルの指からビームが放たれた瞬間、セイは中空から100本近い日本刀を呼びだし、自分のまわりをぐるりと取り囲ませた。そしてその円形のまま、ドラゴンのおしりに一斉に突き立てた。
ギャワワワワン
ドラゴンが痛みにからだをくねらせる。
と同時に、リアムの空気の壁を避けるように、おおきく外側に弾道を歪ませてビームがセイに襲いかかった。
バキバキバキッッッッッ
自分のまわりを取り囲んでいた刀の防御壁がへし折れる音。四方から押し寄せる。セイはおおきくジャンプしてその囲いから飛び出した。その瞬間、すべての刀が砕け散った。
あぶない……
刀を束ねて作った防御壁を、こうも簡単に砕かれるのははじめてだった。
セイはリアムに戦いの指示を仰ぐしかないと考えた。
「リアムさん……」
リアムが倒れていた。
「リアムさん!」
あわてて駆け寄ると、リアムは目をみひらいたまま真上をみてた。
「やられた。今のビームはフェイクだったよ。あのヤロウ、同時に電流みたいなモンをドラゴンの背中にも流しやがった。おかげで感電して……からだが動かねぇ」
「そんな…… ぼくはたまたまジャンプしたから……」
「セイ、逃げろ! あいつは強ぇ」
「バカなことを言わないでください。あのトラウマを倒さないと、メスさんの未練は果たされない」
「現世の昏睡病患者を助けテェのはわかる。だが、あれは危険すぎる」
「なんとかしてみせます」
セイはそう言うと、中空からものすごい数の大剣を呼びだすと、倒れているリアムのまわりをぐるりと取り囲ませた。
「すくなくともこれで直撃は防げるはずです」
「セイ、なにをするつもりだ!」
「あのハマリエルとかいうヤツと戦います!」
セイは日本刀を中空から引き抜いて身構えた。
「あれあれ、弱いくせにわたくしにタイマンを挑むつもり? 命知らずね」
「逃がしてくれるわけじゃないだろ」
「あら、逃がしてあげてもいいわよ」
ゾッとするような笑い顔をむけてきた。
「ジャンヌ・ダルクをここで殺させてくれたらね。そうしたら未練が晴らされず、現世の魂は元の世界に戻れなくなるでしょう」
セイはぐっと唇を噛みしめた。
「そんなことさせない」
「だと思った」
「じゃあ、ここであなたがたを殺しておくしかないわ」
ハマリエルが指先をセイのほうへむけた。が、セイはその前に動いていた。ドラゴンの背中の上をジグザグに動いて、ハマリエルの死角から斬りかかる。
指先からビームが放たれた。
そのビームをセイは剣の腹ではねのけた。
が——
ピキンという硬い音をさせて、刀は真ん中から折れた。
バカな!




