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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
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第45話 ジャンヌ、敵を倒したのはおれだよぉ

 そのときふいに背中からセイは抱きつかれた。

「神の子セイ! ありがとうございます。あなたのおかげでわたしたちは勝ちました」

 ジャンヌだった。

 セイはジャンヌに甲冑を押しつけられて、痛みに顔をしかめながら言った。


「あ、いや、ぼくじゃなくて、ほとんどリアムが……」

 リアムはセイの背中に抱きついているジャンヌのほうへ顔をむけてアピールした。


「そう、そう。ジャンヌ。だいたいの敵を倒したのは、おれだよぉ。イケメンのアランソン公じゃないから評価されないってことぉ」


 ジャンヌはセイのからだから離れると、リアムのほうへ顔をむけた。

「アラン……いえ、ミィシェーレ様。もちろん、あなたさまの活躍はわかっております。本当に助かりました。これも神の思し召しです」

 ジャンヌが頭をさげた。


「ドーロン! ジャン・ドーロン! 旗を掲げなさい」

 ジャンヌは背後に向き直って叫んだ。 

 

 すでにほの暗くなった夕闇に、ジャンヌの三角旗がおおきく振られるのがみえた。


「フランス軍の勝利だ!」

 ジャンヌが鬨の声あげると、あちこちから一斉に勝利の雄叫びが続いた。ロワール川の川岸から、レ・トゥーレル砦から、そして橋のむこうのオルレアンの街からも歓喜の声があがった。


 ラ・イールがル・バタールに苦笑いしながら言った。

「なにがいちばん嬉しいかって……これで英語を覚えなくてすみそうってことだ」

「ラ・イール、心配なかろう。あんたの怒鳴り声は万国共通だ」

「そりゃ、そうだ」

 ラ・イールがル・バタールの肩を叩いて、笑いをはじけさせた。


 だれもが至福の瞬間に酔いしれていた。

 

 そのとき、はるかかなたでなにが鳴く声が聞こえた。

 空の上のほうから聞きなれない生物の咆哮が降ってきた、という印象だった。鳥とも猛獣ともつかない不思議な声だった。


「あれはなんだ?」

 最初にそれを発見したのは、ジル・ド・レだった。彼はオルレアンの街とは反対側、イングランド軍が敗走していった北の空を指さしていた。


「うそ……だろう……」

 ブーランジイが声を強ばらせると、ラ・イールは歯をくいしばって「くそったれめ」と悪態を吐きだした。だがジャンヌはその口汚いことばを叱責しなかった。

 そんな余裕などだれにもなかった。


 

 夕暮れの空をおおきな体躯のドラゴンが、羽ばたきながらこちらへむかってきていた。


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