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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
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第44話 セイ、グラスデール戦

 ドスン、ドスン!


 やや鈍い音。数本の槍がグラスデールの甲冑をとらえていた。

 槍の剣先はグラスデールの腹や胸を的確に突き刺していたが、厚い甲冑はそれをものともしていなかった。


 バカな。

 甲冑ごときが貫けないだって——


「はは、残念だったな、小僧。そんな柔な防御力ではないのだよ」

「グラスデール。死んでからのほうがおしゃべりだな」


 セイはそう言い返しながらグラスデールの背後から足元へ滑り込み、力いっぱい膝に剣を叩き込んだ。

 ガコン!

 斬るというより、叩きつけるという攻撃。

 これで倒れるはずだ、とセイは確信していた。


 だがグラスデールは膝をおるどころか、微動程度しかしなかった。


 まずい——


 からだを沈み込ませたセイの頭上から、グラスデールの剣が振り降ろされてくる。

 その間合いにふっと刀の束が現われ、剣筋をさえぎる。

 

 ガキン、ガキン、ガキン!


 金属を強引に打ち砕くけたたましい音。

 セイが呼びだした刀の盾は、見るも無残にあっという間にへし折れた。

 が、その一瞬の遅延でセイはグラスデールの剣をよけることができた。


 あぶない……


 セイはグラスデールから距離をとると、中空から日本刀を引き抜いた。


『そんな細い剣で勝てるとでも思ってるのか?』

「こんどは『叩き切る』んじゃなくて、こいつ(日本刀)で『斬り落す』」

『うはははは……斬れるものかね』

 グラスデールが口元をゆがめて高笑いした。


 その瞬間だった。

 

 ドーン!!!!


 空気がうねったかと思うと、グラスデールのからだがその場でへしゃげた。堅牢きわまりなかったはずの甲冑が、まるでアルミ缶のようにくしゃっとへこんで、地面に押しつけられて潰れていた。


 な、なにが……


「セイ。あんま手間取ってるから、おれがやっちまったぞ」

 要塞のほうから声が聞こえた。

 リアムが腕を地面に叩きつけたようなポーズをして立っていた。

「リアムさん」

「すまないなぁ。こっちがサクッと片づいちゃったもんでね。手持ち無沙汰でさ」

「あ、いえ。あ、ありがとうございます」


 あまりにも圧倒的な力に、セイはことばがでなかった。

 リアムはおおきな跳躍でポーンと要塞の上から降りてくると、潰れたグラスデールを覗き込んで、わざとらしく肩をすくめてみせた。

「ちょいと、力みすぎちゃったね」


「すごいですよ。リアムさん」

「だろう。だっておれってSS級……ま、どーでもいいか。ジャンヌを守れたんならな」

「はい」


 そのときふいに背中からセイは抱きつかれた。

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