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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
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第31話 ジャンヌ快進撃

 次の勝利はジャンヌの身勝手さから呼び込まれた。

 

 ジャンヌはサン=ルー砦の勝利の勢いそのままに、次の砦を攻めようとした。

 が、オルレアン要塞司令官ラウル・ドゥ・ゴークールが城門を固め、通行を禁じていたた。

「開けなさい。ラウル!」

「できません。ジャンヌ殿、当分のあいだ攻撃をしないと、会議で決定されたのです」

「これほどまでに士気が高揚しているのです。兵も市民も共に出撃して、次の砦に攻撃をしかければ、次なる勝利を手中にできるのです」

「無理を言わんでもらいたい。これは貴族や指揮官の総意なのです」

 

 ジャンヌの大げんかはしばらく続いたが、埒が明かないとばかりに単独行動にうってでた。ラ・イール、ジル・ド・レほか精鋭たちを集めると、ロワール川の南にあるサン・ジャン・ル・ブラン砦に攻撃をしかけた。


挿絵(By みてみん)

サン・ジャン・ル・ブラン砦&オーギュスタン要塞


 しかし、サン=ルー砦陥落におそれをなしたイングランド軍は、この砦をすでに放棄しており、おおきなオーギュスタン要塞に逃げ込んでいた。まんまと砦を手に入れたジャンヌはすぐさま、このオーギュスタン要塞を攻める。


 だがロワール川の中洲ともいえるサン・テンヤン島に上陸したところで、イングランド軍がジャンヌ隊の後衛を急襲した。

 ジャンヌとラ・イールは船で南岸に戻ると、先頭にたってイングランド軍に突撃した。手薄な兵力での戦いだったが、槍を手にして先陣を切るふたりを見て、フランス兵たちは勢いづいて、烈火のとごとくイングランド兵に襲いかかった。

 ジャンヌが勝手に戦闘の火ぶたをきったのを知ったル・バタールは、まよわず増援部隊を送り、ジャンヌの指示に従い要塞に大砲を撃ち込んだ。


 勢いをえたジャンヌ軍はとてつもない速さで、四方八方から砦を攻めたてた。

 その砦にいたイングランド兵のほとんどは、あっと言う間に討取られるか、生け捕りにされた。命からがら難を逃れた者は、橋のたもとのレ・トゥーレル砦に退却した。


 セイには拾いものの、薄氷を踏むような勝利にしか見えなかったが、ジャンヌの闘志が思いがけない勝利をもたらしたことで、フランス兵の士気はみるみるあがっていくのがわかった。


 その夜、ジャンヌたちは奪取したオーギュスタン要塞で夜を明かした。


「オルレアンに戻らないんですか?」

 セイがラ・イールにそう尋ねると、彼は困り果てたような顔をした。

「まぁ、戦場の習慣だからな。おおきな戦いで勝ったあと、どっちが勝ったかを見せつけるために、勝ったほうがその場に一晩留まるってぇのがな」

「でも……」

 セイは砦を見回しながら続けた。


「勝ったようには見えませんけど……」

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