第21話 日本人だからサムライ・ソードっていうわけか
「そうなんですね。安心しました。あなたがトラウマでなくて……」
「そうか…… じゃあ、安心ついでにその物騒なものしまってくんねぇか」
リアムはセイが身構えたままの刀を指さしながら言った。
「あ、す、すみません」
セイは刀を横に突き出した。とたんに中空に黒い空間があらわれ、その刀を吸い込んで消えた。
「やはり日本人だからサムライ・ソードっていうわけか」
「まぁ、そうかもしれませんね。ところで、ミィシェーレさん、なぜ、あなたはアランソン公に化けてたんです」
「セイ、リアムと呼んでくれ。まぁ、アランソン公に化けているあいだは、ちゃんと敬意をもって呼んでくれよ。あまり目立ちたくないからね」
「それは目立つとぼくみたいに、いろいろ説明をしなくちゃならないからですか?」
「まぁ、それもある。だけどさっきも言ったように、おれはあくまでもサポート役……」
「主役の前にしゃしゃりでるような野暮はしたくないってことさ……」
「いくらおれがSS級だとしてもな」
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リアム・ミィシェーレは目の前の日本人の少年をあらためて見つめた。
まがりなりにも小姓の格好をしているが、この時代、この場所ではありえない東洋人の顔と肌は、どうやっても違和感がある。
まるでポリコレまみれの、クソ映画みたいだな……
「SS級? 階級があるんですか?」
セイが困惑を隠しきれない表情を浮かべていた。
「あ、ああ…… ま、気にしないでくれ。わたしたちの組織での序列だ。ところでさきほどおれのことをトラウマと呼んでたな。そいつぁはなんだ」
「あ、すみません。ぼくが勝手にそう呼んでるんです。この前世に現世の魂を引きずりこんで、歴史を変えさせまいと邪魔するヤツラのことを」
「なるほどね……」
リムルは前世の記憶へ潜る能力を得ながら、セイが自分たちとはちがう世界で生きていることにあらためて気づいた。
「セイ、失礼だが、きみが信じている宗教ってなにか教えてくれるかい?」
「信じてる宗教? そんなものないですよ」
「無宗教! マジで? あ、いや、そうか、きみは日本人だものね」
「ええ、まぁ。日本人の7割が無宗教って言われてますからね」
リムルは自分が戦っているものの正体をセイに告げようかどうか迷った。もしそれを明確に指摘すれば、キリスト教の世界観を押しつけることになる。




