表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
850/932

第19話 確かに神に導かれた人かもしれん

「まわりをよく見なさい。この軍隊がなんの役にたたない集団に見えますか? 兵たちはもう先ほどまでとはちがっていますよ。みな神のご加護を与えられたのです」

 ジャンヌは手をひろげて、まわりの兵たちを指し示した。

「わたしの目にはあなたたちの本当の姿が見えています。愛国心に満ちあふれた、神に選ばれし軍隊になることがわかっているのです。わたしはあなたたちを率いていけることを誇らしく思っています」

 だれもがジャンヌのことばに、きょとんとしていた。

 

「もしかして、わたしの目がおかしいのでしょうか?」

 ジャンヌがちょっととまどったように、眉根をよせた。


 うわははははははは……


 突然、ラ・イールがおおきな笑い声をあげた。


「まいった、まいった。おまえさんは確かに神に導かれた人かもしれん」

 

 ふたりを取り巻いていた緊張が解け、まわりの兵士や司令官たちの表情がやわらいだ。一触即発にそなえていたセイも、おもわず脱力する。


 ラ・イールがにっこりと笑って、ジャンヌのほうへ手をさしだした。

「オレ様はフランス国王軍傭兵隊長エティエンヌ・ド・ヴィニョール。あまりに怒りっぽいんでな。みんなからは、ラ・イール(怒り)と呼ばれている」


「そうでしょうね。だって、一番笑い顔がステキなんですもの」


「ステキ?」


「表情ゆたかな人は、よく怒ります」

 ドッとあたりに笑いがはじけた。


「あの方はとても不思議な人ですね」

 セイに声をかけてきたのは、ジル・ド・レだった。

「あ、元帥様。ぼくはジャンヌの小姓をやっております、セイと申します」

 セイは反射的にかしこまってみせたが、ジルは手をふりながら言った。


「そんなにかしこまらないでくれないか。それでなくても若いぼくは、ここじゃあ腫れ物のように扱われているんだ。年の近いきみのような少年と、話をするときくらい、もっとフランクに話せたらって思ってる」

「ありがとうございます。では、ジル様」


「ジルさ……ま…… ん、まぁ、しかたないだろう。それでいいよ。ところでセイ、きみはジャンヌのことをどう思ってる?」

「というと?」

「彼女は本物の聖女なのだろうかってことだ。ぼくは本物にしか見えないし、そう信じたい。ちかくにいるきみの意見を聞ければ……」


「本物ですよ。ジル様」

 セイは自信をもって断言した。

「ジャンヌはオルレアンを解放し、イングランド軍を駆逐し、フランス王太子を即位させます」

 ジルの目がおおきく見開かれた。

「おお、そうなのか。そこまで自信をもって言ってもらえると、ぼくも高揚するなぁ。で、そのあとどうなるんだい」

 

「それは……それは知らないほうがいい」

「ど、どういう……ことなんだ」


「ご心配なく、ジル様。ジャンヌはぼくが守ります。どんな苦難が襲いかかってきても、ぼくがかならず。そのためにぼくはここにいるんですから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ