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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
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第2話 精神潜入研究所 本格始動

 かがりにとって父、輝雄の勤める大学のキャンパスは、自分の庭のようなものだった。

 研究に没頭していた父はなにかにつけ、かがりを自分の研究室に連れてきた。おそらく遊園地や山や海などに遊びに行ったとは思うのだが、かがりの子供の頃のほとんどの思い出は、父の研究室の風景で占められている。


 だが今回、専用施設が建設されたことは、あまりにもおおきな変化だった。

 国家予算が『昏睡病』関連の研究におおきく割り当てられたことで、狭くて使い勝手のわるい研究室をとびだし、父は病院をも併設された最新鋭の施設の最高責任者となった。


「立派な建物ね」

 かがりの口からついそんなことばが漏れた。

 建設途中もずっと見ていたはずなのに、完成を祝した横断幕や花輪などで飾られているのをみて、あらためて嬉しさがこみあげてきたからだ。

「ああ、叔父さんの夢、叶ってよかったね」

「聖ちゃんのおかげよ」

「ぼくが? そんなことない……」


 かがりは力強くかぶりを振った。


「ううん。謙遜しないで。お父さんが言ってたモン。昏睡病の治癒率で日本一の実績があったからこそ、これだけの予算がついたって」

「ぼくは冴をすくうための手がかりが欲しくて、昏睡病の人々の前世に潜ってただけさ。結果的にそのひとたちの魂を救ったにすぎない」

 

 聖はダイブの話がでるたびに、いつもそういう言い方をする。だけどかがりにはなんとなく、そういう斜にかまえた言い方をするのかがわかっていた。偉大な力をもってしまった者として、過剰な使命感に駆られないよう自制しているのだ。使命感を意識しすぎると、それに押し潰されてしまうことが、なんとなくわかっているのだろう。


 かがりと聖は光彩認証と指紋認証で、入り口を通り抜けると、父がいるであろうモニタ室へむかった。父は自分たちの姿をみるなり、おおげさに両手をひろげてみせた。いまにも抱きつきそうな勢いだった。


「かがり、聖、ついに研究所の本格稼働開始だ」

「叔父さん、おめでとう」

「お父さん、おめでとう」


「ああ、これも聖のおかげだ。兄貴にも聖の活躍を見せてやりたいよ」

「お父さん。伯父さんのことは……」

「いやあ、すまん、すまん。うれしくてつい……」

「叔父さん、気にしないでください。それよりもすでに患者さんがスタンバイしてるって聞いてるけど?」

「ああ、上層階にある『集中治療室』とワイヤレスで接続されている」

「離れた場所で? しかもワイヤレス?」

 驚きのあまり、かがりの声はやや裏返っていた。


「ああ、そうだ。研究室時代のように、真横にあるベッドで横になってもらうということはなくなった」

「ええ、それはそうだけど…… ワイヤレス接続って……不安定にならないの?」


「ああ、心配するのも無理はない。でも国際規格でそうさだめられているんだ。やっとそれに準拠できたってとこだ」

「なぜ国際規格がワイヤレスなんです?」

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