第63話 サイコダイバーズって、いかれダイバーってこと?
「サイコダイバーズ」
「PSYCHO DIVERSって、いかれダイバーってこと?」
わたしは頭のよこでひとさし指をくるくる回しながら言った。
「ちがう。PSYCIC CO・OPERATIVE DIVERS。略してそう呼んでいるらしい」
「はん、厨二病まるだしのネーミングね」
「厨二病?」
「つまりガキが考えそうな呼称ってこと」
「そうか。だが、我々も近い将来、このサイコ・ダイバーズの一員に組み入れられるんだ」
「オレはこの会社を辞めさせていただくが、そのサイコ・ダイバーズって組織がうごきだしたら、どこかでお嬢さんと一緒にダイブする日がくるかもしれねぇのさ」
「そうなの?」
「ええ。でもそれまでには、お嬢さんに負けねぇくらいのダイバーになっておきますよ」
「ローガンは充分に凄腕ダイバーよ」
「まだまだです。鍛え直してきます」
「ローガン、きみがうらやましいよ」
ビジェイがまぶしそうにローガンのほうを見つめていた。
「ビジェイ。あなたも会社辞めるって言うンじゃないでしょうね」
「エヴァちゃん、それはないよ」
苦笑いしながら、ビジェイが答えた。
「ぼくはこの会社に残る。それしか選択肢がないからね」
「どういうこと?」
ビジェイはすこし哀しげな表情で言った。
「ぼくの出身はインドでね。とてもひくいカーストの家庭に産まれたんだ。カースト制度、知ってるかな。そのカーストに産まれたら、つける職業は限られるし、結婚もおなじカースト同士でしかできない。つける職業といってもね、ひくいカーストの者にはまともな職業は用意されていないし、ほかの職業につける能力があっても禁止されているから、端から対象外になるのさ」
「ひどい…… 今は21世紀でしょ」
「21世紀でもだよ。だけどね。このマインド・ダイバーっていう職業は、ヒンドゥー教の教義のなかで、禁止されていないんだ。そりゃそうだよね。その時代にこんな職業はなかったんだから」
「まぁ、そ、そうだわね」
「ぼくのカーストで、お金を稼げる職業につく選択肢は限られている。IT技術者になるか、マインド・ダイバーになるかだ……」
「だからぼくはここでダイブするしか生きる道がないんだ」




