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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
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第53話 わたしの父を覚えているか!

「フラウロス、わたしが近づいてくるのが怖いの?」

 わたしはテューボーンの頭のてっぺんで、余裕の表情を浮かべているフラウロスを(あお)ってやった。


「怖い? 失礼ながらそれはどういう感情かね?」


「びびってるって言ったほうがいい? あなた、わたしを近づけさせまいとしてる」

「そりゃ、当然だろ。突然、そんな見たこともない兵器をだしてきたんだからね。これは用心しているのだよ。怖がってるのではなくてね」


「あら、悪魔も人間とおんなじね。見たこともない兵器を目の当たりにすると、とたんにガクブルしちゃうのね」


「マルケルス!」

 そのとき後部座席でわたしとフラウロスのやりとりを、黙って聞いていたリスクスが突然沈黙を破った。

「わたしの父を覚えているか!」


 フラウロスはしばらくリスクスを見あげていたが、小馬鹿にするような笑いをうかべた。

「もちろんだとも、リスクス。ローマの執政官に一騎打ちを申し込んできた、ガリア人の族長だろ」

「その通りだ」

「だったら感謝してもらいたいな。そんな無茶苦茶な申し出を受けてやったんだ。戦士としての、死に場所を用意してやったんだぜ」

「ああ、そうかもしれんな。だが、わたしにとっては、ローマ人に、おまえに父を殺された。それだけだ」


「頭が固いことだな、リスクス。だからガリア人はローマにもカルタゴにも、いいように使われるだけの蛮族のままなんだ」


「それがガリア人の生き方だから仕方があるまい!」


「はん、ーったく、こんな言いがかりで、歴史を変えられてはたまらんな。そうだろ、未来からきたお嬢ちゃん……そういや、名前を聞いてなかったな」


「ざーんねん。あなたのような三流悪魔ごときに、名乗る名前は持ち合わせていません。それにこの人の未練がどんなものだろうと、わたしは気にしてませんよ。人間の人生における未練なんて、たいがいがそんなちっぽけなモンでしょ」


「はん、だから瑣末な存在なんだよね。人間というのは」


「その矮小な未練に(たか)っている存在に言われたくはないですわ」


「お嬢ちゃん、(たか)っているとは、ちと言いすぎじゃないかなぁ」

「だってそうでしょ? わたしたちからすれば、人のからだに巣くってるウイルスと同等ですわ」

「あまり口が過ぎると、痛い目にあうよ。お嬢ちゃん」

「痛い目にあわせられなくて困ってるから、そこで吠えてるんでしょ?」


「ほう。子供のくせに悪魔をそんなにバカにするのかね。それでは本気をみせるしかないようだな」

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