第49話 巨大なモンスター登場
ドカーン!
あたりの空気をビリビリと震わせる爆発音。
ズゥゥゥゥゥン。
続けてミノタウロスが地面に倒れて、今度は地面を揺らす。
「あと5体!」
わたしは照準ごしに次の標的をさがした。
が、残っているはずのミノタウロスは、どこにもいなかった。
「あれ?」
おもわず照準から目をはなして、戦場を俯瞰した。
乱戦が繰り広げられている戦場のどこにもミノタウロスの姿、そしてマルケルスの姿は見あたらなかった。
あんなデカイモンスターが、どうやったら消えるのよぉ
そのとき、ふいに地面が揺れた。
ミノタウロスが倒れたていどの揺れではなかった。
地中深くから地鳴りがして、地面にあるもののすべてなぎ倒すような激しさで揺れた。
騎兵はバランスをうしない、馬から振り落とされた。兵士たちは思わず手にした剣を地面に突き立て、足を踏ん張った。
わたしは早々にバズーカーを地面に投げ捨て、その場にお尻をつけてしゃがみ込んでいた。
かなたで爆発音が鳴り響いた。雷でもちかくに落ちたのかと聞き間違えるほど、耳を聾するような音だった。
思わずたちあがって、その音がしたほうに目をやった。
戦場のむこう側にあるスキピオ本陣の丘の斜面から、土煙があがっているのが見えた。その煙のなかから、なにかが這い上がってくる。
それはドラゴンだった。
ゆうに100体に迫るほどの数のドラゴンが、その長い首をもたげていた。そしてそのドラゴンは口から火を吐き、目から雷を放っていた。直接攻撃してきているわけじゃなく、まだ威嚇しているレベルだとすぐわかったが、それでもうじゃうじゃとドラゴンの首が蠢いているさまには圧倒された。
だけど、そのおびたただしい数のドラゴンは、本体ではなかった。
それは全身を逆立った羽毛で包まれ、下半身は大蛇のようにとぐろを巻くモンスターだった。上半身はわずかながら人間の男性を感じさせたが、ゴツゴツとした骨のような羽根をせなかに生やしており、とても人間と同等なものとは思えなかった。
体長は100メートルか、それ以上。
そこにいるだれもが、その威容に気圧されて無言のまま、そのモンスターをみあげていた。
ギャワァァァァァン
ドラゴンの群れが一斉に咆哮した。
最初に見えたドラゴンたちは、その生物の頭髪でしかなかった。
「テュ…… テューポーン……」
ビジェイが声を震わせた。
「テューポーン?」
わたしと父が同時にビジェイのことばを反芻した。
「ギリシア神話に出てくる最も強く恐ろしい巨神。です。あの最高神ゼウスに唯一の土をつけたほどで、「タイフーン」の台風 (Typhoon)の語源にもなっているモンスターですよ」
「な、なんでそんな強大なモンスターが……」
「マルケルスですよ」
ローガンが吐き捨てるように言った。
「いや、悪魔フラウロスか。あいつが、テューボーンの頭の上にいる」




