第48話 あちゃー、やっちゃったぁ
「ええ。M9A1でいかせてもらうわ」
わたしはバズーカーを肩に担ぎ上げると、マルケルスたちの一番ちかくにいるミノタウロスに照準を合わせた。そのミノタウロスは手にした大きな石を投げようと、腕をふりあげたところだった。
わたしはなんのためらいもなく、トリガーをひいた。
バシュっと発火音と共に、砲弾が飛び出した。
空に煙がたなびく尾がみえた、かと思うと、ミノタウロスの頭が吹き飛んでいた。
「ガッチャ!」
わたしはおもわずパチンと指を鳴らしていた。
投げつけようとした石が、手から滑り落ちそのまま真下に落ちる。その石はすぐ下にいたアルキメデスを押し潰した。
「あちゃー、やっちゃったぁ」
意図しない結果をまのあたりにして、わたしは思わず口元をおおった。
だけど、アルキメデスを殺されて怒り狂ったマルケルスが、ほかのミノタウロスたちに攻撃命令をくだしているのをみて、わたしはすぐさま二発目を放った。
ドーン!!!!!
あたりの空気を揺さぶるような振動とともに、今度はミノタウロスの上半身が吹き飛んだ。
あまりの轟音に、中央で戦っていたローマ兵、カルタゴ兵とも手がとまった。なにが起きたかわからず、敵味方関係なくお互いの顔をみあっている。
そこへローガンの放った炎の弾丸が、ローマ兵に飛んでいった。ボンという威勢のいい音とともに、もえあがるローマ兵たち。
「ローガン、大丈夫なの?」
ローガンは左肩をぶらんとさせていたが、残った右腕をふりまわして、火の攻撃を放っていた。
「お嬢ちゃ…… いやお嬢さん。気にしねぇでくれ。左肩が砕けただけでさぁ」
「そ、命に別状がないならいいわ。あなたも戦ってちょうだい」
ローガンは苦笑いをかえしてきた。
「へい、へい。存分に戦わせていただきますよ」
わたしはそれから立て続けに二体のミノタウロスのからだを吹き飛ばした。
ドォォォォォォン
天変地異でも起きたかという爆音に、ローマ兵たちはたじろぎはじめた。
ローマ兵を責めるわけにはいかないと思う。
自分たちに味方するモンスターが、爆発音とともに吹き飛んでいるのだ。砲弾の軌跡が見えない彼らからすると、神の天啓でもくだったとでも思うのかもしれない。
逆にカルタゴ兵は士気があがっていく。
「全軍、前進! 勝負を決めるぞ!」
騎馬の上から、ハンニバルが声をはりあげた。
そこにはハンニバルの護衛兵と古参の兵士、全部合わせても100人ほどしかいなかったけど、鬨の声をあげて、前進をはじめた。
「CEO、どうします?」
ローガンが父に指示を仰いだ。
「リスクスも一緒だ。我々も前進せざるをえまい。エヴァ、ミノタウロスを全部倒せるか?」
背後から父にそう訊かれたけど、わたしはそれを無視して照準を覗き込んで、トリガーをひいた。




