表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
805/932

第40話 シラクサからの刺客

「このジジイには、さすがのおれも手こずらされた。見たこともない投石機で兵を寄せつけねぇし、海から上陸しようとしたら、おかしな機械で船の舳先を持ちあげられて、あれよあれよという間にひっくり返された。あげくに光線かなにかで遠くから船に火をつけられたんだ」



「おどろくに当たらん。大量の鏡で太陽の光を一ヶ所に集約しただけじゃ」

 老人は自分の功績を褒められるのは、迷惑とばかりに口を曲げた。



「アルキメデス!!」



 ビジェイがおおきな声で叫んだ。

 老人はビジェイのほうを不思議そうに見つめた。

「なぜ、あんたはわしを知っている?」


「ローマ軍の攻撃を、自分で開発した最先端の兵器でことごとく蹴散らした、シラクサの軍師にして、希代の数学者、そして歴史的物理学者…… し、しかし、あなたはシラクサ攻囲戦で、突入してきたローマ兵に殺されたはずです」


「ああ、あれは危なかった……」

 マルケルスが頭をかきながら言った。

「この爺さん、床に描いた図形を踏まれて、ぶち切れちまってな。あやうくうちの兵に殺されるところだった」

「いや、ちがう。『わしの図形を踏むな!』と言って、ローマ兵に殺されるはずだ」

 ビジェイがマルケルスに反論した。


「だから危なかった、と言ってるだろ?」

「バカな? 歴史を変えたのか?」


「だから?」

 その声色は、人間の声帯から発せられたものとは思えなかった。機械が軋むような耳障りのわるい音のようであり、未知の生物の咆哮のようであった。


 わたしはハッとしてマルケルスを見つめた。


「てめぇ、悪魔だな!」

 ローガンが前に足を踏みだしながら言った。

 前のめりのローガンを父が手を横につきだして、押しとどめる。

「ローガン、はやるな! 階級もわからない相手(あくま)に、不用意に挑むんじゃない。命を落とすぞ」


「ほう。さすがリーダー。おれの階級の高さに気づいたかね」

「いいや、正直わからん。だが、もし名のある悪魔であれば、作戦も練らずに戦っていいはずがない」

「賢明だ」


「お父さん、悪魔の階級ってなに?」


「エヴァ。おまえは遭遇したことがないだろうが、ここのところ悪魔どもは勢いを強めていて、強い悪魔が復活しはじめているのだ。これまでは名もしれぬ雑魚がほとんどだったが……」

「CEO、どうやらこいつは……」

「ああ。すくなくとも雑魚ではないようだ」


「ふふふ、正体を教えてやろう」

 にたりとマルケルスが笑うと、その口元がガバッと避けて、猛獣の顔が浮かびあがった


「豹!」

 ローガンが叫んだ。


「我が名は地獄の大侯爵フラウロス。序列64番目の悪魔だよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ