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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
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第39話 ルクス・クラウディウス・マルケルス

「おいおい、挨拶もなしかい」

「きさまぁ、父の仇!」

「父の仇ぃ? なんだ、そりゃ?」


「だまれ!」

 リスクスが剣をふりあげて、打ち下ろす。マルケルスはその一撃を易々と受け流した。


「リスクス、剣をひけ!」

「マルケルス、もういい!」

 ハンニバルとスキピオが同時に叫んだ。


 マルケルスがリスクスに蔑むような目つきを投げつけると、剣をゆっくりと腰の革帯に戻した。その仕草を目で追いながら、スキピオが言った。


「ハンニバル、あなたには紹介不要だろうが、紹介させてもらうよ。『イタリアの剣』、ルクス・クラウディウス・マルケルス」


「ああ、スキピオ。紹介は不要だ。この男はわたしにとって、不倶戴天の敵だよ。まったくどれほどこの年寄りに苦しめられたか。カンナエの戦い以降、この男はわたしの軍をずっと追撃しては襲いかかってきた。ほとんどが小競り合い程度の戦闘だったが、我が軍はすこしづつ兵を削られていった」

「しかたなぇのよ。こちらもカンナエの戦いで壊滅的被害を喰らったからね。正面からぶつかるわけにはいかなくてね」



「何年だ! そなたはわたしを何年のあいだ苦しめてきた?」



「14年だ、たったのね。ノラの戦いでささやかな勝利をもぎとってからは、ただお前さんだけを追いかけてきたにすぎんがね」

本国(カルタゴ)やスペインからの補給がおぼつかない以上、消耗戦を避けるしないのだ。そこをそなたは……」

「ああ、たっぷりと消耗させていただいたよ」

「そなたは、幸運にも悪運にも左右されない。勝てば勢いに乗って追撃し、負けてもなお立ち向かってくる。そのおかげでいつの頃か、我が軍はローマ軍に劣勢をしいられ、この会戦で雌雄を決するまでに追い込まれている」


「だが、おれはおまえさんだけにかかずらわってたわけじゃねぇよ。カルタゴに寝返ったシラクサ討伐やら、なんやらにもやらされていたからな。まぁ、おかげでスゴイ軍師を手に入れた」


 マルケルスがスキピオの背後に控えていた、ひときわ年をとった老人を手招きした。老人がよろよろと前に歩みでてきた。


 わたしには髭もじゃの老人は、どれもおなじ顔にしか見えなかったし、歩くのもおぼつかなそうな状態で、軍師、と呼ばれているのが嘘っぽく感じられた。

 だけど、ビジェイはちがっていた。その老人をみるなり、驚愕の表情でうわごとのように呟いた。


「そんな…… まさか……シラクサって……」



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