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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
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第38話 ハンニバルとスキピオの会談

「ハンニバル。明日の会戦の準備をすることを勧めることしか、わたしにはできません。なぜならカルタゴ人は……いや、あなたはとくに、平和のなかで生きることが、なによりも不得手であるようですから……」


「そうだな。スキピオ、そなたの言う通りかもしれん。わたしがそなたの立場であれば、おなじことを申しただろう」

 ハンニバルはわたしたちのほうに手を向けて、残念そうに言った。

「だが、わたしにはここに未来人の力を得た。先日、トラジメーノの湖を瞬時に凍らせ、兵たちを生きたまま焼き尽くし、カンナエではアドリア海から現われたモンスターを未来の武器で殲滅した。ローマ軍が勢いづいたところで、この神のような力には太刀打ちできぬぞ」


「そうですか…… そこにいる見慣れない格好のひとたちが…… 少女まで連れてきているので、なにかと思っていたのですが」

 スキピオはまったく動じた様子を見せなかった。

 なにかある——


 わたしだけでなく、父やローガンたちもそう感じたはずだ。


「アドリア海から現われたモンスター…… あれ、なんだったと思いますか?」

 スキピオが口元に余裕をにじませた。


「なに?」

「カンナエの戦い、もうすこしで勝てたんですよ」

「どういうことかね?」


「この世界にない『力』を持っているのは、そちらだけではない、ということですよ、ハンニバル」



「ああ、そういうことだよ」

 スキピオの背後に控えていた警士のひとりが、ゆっくりと立ち上がりながら言った。あきらかに老齢の男。わかきスキピオの横に立つと、まるで親子、いや祖父と孫ほど違って見える。だが、その顔に刻まれているのは、皴だけでなく、恐ろしいほどの凄みだった。

 素人のわたしにも、この男が並々ならぬ修羅場をくぐり抜けてきた戦士であると、すぐにわかった。


 だけどその顔を見るなり、ハンニバルの顔が強ばった。


「マルケルス!」


 そう呟いた瞬間、ハンニバルの背後から飛び出した影があった。


 リスクスだった。


「いけない!」

 ビジェイが叫んだが、リスクスはマルケルスに剣で斬りかかっていた。

 渾身の力で剣を振りおろすリスクス。


 だけど、マルケルスは余裕の表情で、その剣を受けていた。まるで最初から剣を構えていたかのように、優雅な動きでリスクスの強烈な一撃を剣で防いでいた。

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