表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ1 化天の夢幻の巻 〜 織田信長編 〜
8/932

第8話 聖ちゃん…、助けて……。脳が縮む

 精神へのダイブの時間まで、少々時間があるということで、四人は研究所近くのハンバーガー・ショップですこし時間をつぶすことになった。

 マリアに焚きつけられたたせいで、かがりはどうにも落ち着かない気分で、エヴァの方をちらちらみていた。その視線がさすがに気になって、エヴァがかがりに尋ねた。

「かがり、どうしたの?」

 かがりは「なんでもないよ」と手を振ってごまかしたが、マリアがドリンクをストローで、ズズッと嫌な音がするまで一気に吸い込んでから言った。

「エヴァ、かがりは、おまえに聖がとられるんじゃないかって心配だとよ!」

「ち、ちょっと、マリア。な、なに言うのよ」

 あまりにダイレクトな攻撃に、かがりはからだをおおきく前にのりだして否定した。

 そのしぐさをみて聖は、そちらからも否定して欲しいというサインと受け取ったのか、マリアのほうにからだをむけて諭すように言った。

「マリア、さっきから君は勘違いばかりしてるよ。ぼくとかがりは、いとこ同士なんだ。だから……」

 その反論をマリアが手を前につきだして封じると、ことさら嫌らしげな笑みをうかべてエヴァに言った。

「な、エヴァ、こいつほんとうに鈍感力は半端ねーだろ」

 だが、エヴァはきょとんとした類でマリアを見ていた。

「マリア、あなた、何を言ってるのかしら?」

 その反応に、マリアはできるだけ派手な音が立つように、紙コップの底をわざとテーブルに強く打ちつけた。

「かぁーーっ、エヴァ、おめーもかよ。この天然記念物どもがぁ。ちゃんと意味がわかってんの、オレとかがりだけじゃねぇか」

「ちょーっと、わたしを巻き込まないでよ」

 かがりは芝居がかった調子で反駁してみせた。こんな場でなりゆきで、濡れ衣を着せられるのは勘弁だった。しかも、それが本当は濡れ衣でないのならなおさらだ。

 その心根を見透かしたのか、マリアはうんざりした表情をした。

「かがり、元々はおまえが、聖とエヴァが潜っている間に、オレたちがデキちまうンじゃないかって心配してたからだろ」

 エヴァがそのことば尻だけとらえて、すぐに反応した。

「あら、私たちのことを心配してくれてるのね。ありがとう、かがり」

 マリアはさらにうんざりとした顔つきで、エヴァに向き直った。

「エヴァ、おまえは(おか)にあがると、とたんにポンコツになるな。やり手エージェントモードにもどって、金、金、言っているほうが、よっぽどおまえらしい」

「あら、マリア、聖職者があまり金のことを言うもんじゃ」

「おめえに言われたくねぇ」

 そのやりとりを見ながら聖はけらけらと笑っていた。

 聖の屈託のない笑顔を横目に、かがりは嘆息した。


 こんな笑顔みせられちゃあね……。

 冴ちゃんがむこうの世界に閉じこめられてから、聖ちゃんはずっと一人で歯くいしばって潜ってたから……。

 なんかくやしいな……。


 その時、頭の中にキーンという音叉のような音が聞こえた。一瞬、耳鳴りかなにかと思ったが、すぐに、その音が『音』ではないことに気づいた。

 だれかが、自分の頭のなかでなにかを呟いている。

 いや、呪詛のような耳障りな言霊を詠唱している……。あまりに高速すぎて高周波の音として、聞こえているのだ。

 かがりはセイに訴えかけようと、唇をうごかした。が、そのとたん、脳を無数の針のようなもので、直接突き刺されたような痛みに悶絶した。体中の毛穴から汗が吹き出し、目がかすむ。

 かがりはよろめいて、テーブルの上のドリンクを床にぶちまけた。

 まわりの人間がかがりの異変に気づいて、声をかけた。聖が真っ先に顔をのぞき込む。


 あまり見せたことがない心配そうな表情……。

 だが、かがりはそんな聖にむかって、一言しぼり出すのが精いっぱいだった。




「聖ちゃん……。助けて……。脳が縮む」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ