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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
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第30話 アダム・ガードナーの力(ギフト)

 ふっと意識が戻る。


「逃げないと!」

 リスクスの声が聞こえた。

「あれは俺っちを狙ってるんだろ」


 そう叫んでリスクスは立ち上がろうとした。

 そのからだに父が飛びかかった。そしてリスクスのからだに覆いかぶさるようにして、地面に伏せさせた。リスクスのからだが地面にたたき伏せられた。



 そのはるか上を氷の弾丸が飛んでいく。



 なにが——?



 わたしには意味がわからなかった。

 今の今、リスクスはわたしの目の前で蜂の巣になって死んだはずなのに、一瞬ののちにその運命が変わって、ギリギリのところで命を拾っている。

 父はリスクスの背中の上から、身をはがすと、リスクスに「絶対に立ち上がるな」と厳命して、ゆっくりと中腰になった。


「お父様、今、なにが…… なにが起きたの?」


 父は炎の盾をかいくぐって水の弾丸が飛んでこないか、気を配りながら言った。


「エヴァ。これがわたしの(ギフト)だ」

「どんな力……なの?」


「わたしは『時間』を願った。そして時間を自在に操る(ギフト)を手に入れたんだ」


 時間を自在に——?


「時間を巻き戻したの!!!?」

「ああ、ほんの30秒ほどね」


「最強じゃない!! 失敗してもなんどでもやり直せるわ」


「それがそううまくいかないんだ」

 父の口調はその能力に見合わないほど、自嘲気味に感じられた。

「この力はほかの力に比べて、要引揚者の『未練』の強さにより大きく影響される。残念ながら、このリスクスの未練では30秒巻き戻すの精いっぱいだ」

「未練の力が弱いってこと?」

「ああ…… 残念ながらね」

「でも30秒もあれば、大概の危機は切り抜けられるわ」

「そうはいかない」


 そのとき、上から弓なりになって降り注いできた水の弾丸が、伏せているリスクスのからだを貫いた。

「リスクス!」

 父が叫ぶと同時に、あたりの風景がぎゅるぎゅるっとまた歪んだ。



 次の瞬間、父がリスクスにかけより、伏せている彼の体を掴んで引っぱっている姿が目にはいった。

 そこへ上から水の弾丸が降り注いできた。


 間一髪というタイミングだった。


 なんとか着弾箇所から体を移動させるのに成功したけど、あやうくリスクスの脚に弾丸が当たるところだった。

「ギリギリだったじゃない!」

「ああ、さっきより5秒以上時間が短縮されてる」

「なぁに。だんだん短くなるの?」


「そうだ。未練の思いが強ければ数時間も余裕があるんだが、彼の場合最初の時点で30秒しかなかった。これではあと数回も喰らえば、助けられなくなる」


 わたしは肩を落としてため息をついた。


「お父様。お父様の時間を操れる(ギフト)ってスゴイ能力だと思うわ。でもこれじゃあ、役にたたないじゃないの」

「うむ。それまでに手をうたねば……」



「このミッションは失敗する」

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