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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
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第28話 悪魔の攻勢はじまる

「おいでなすった」

「半馬半魚…… おそらくヒッポカムポスだろうね」

 ローガンもビジェイもじつに落ちついていた。


「なに? そのヒッポカム……なんとかっていうのは?」

「ギリシア神話に登場するモンスターさ」


 最初の一体に続いて、続々とヒッポカムポスがあがってきた。

 からだを器用にくねらせながら、猛烈なスピードで騎兵たちに突撃していく。背後から異形のモンスターに襲われては、さすがのヌミディア騎兵たちもひとたまりもなかった。


「ローガン、ビジェイ。やつらを止めろ! このままだとハンニバルが負けるぞ」

 父はすこし高圧的に命令をくだした。


「まかせてくだせえ」

 そういうとローガンが指をパチンとならした。

 と、いくつもちいさな炎の玉が現われたかと思うと、ものすごい勢いで地面を転がっていった。地の草を焦がしながら、幾筋もの光跡が戦場の兵士たちの足元をかいくぐり、ヒッポカムポスにむかっていく。

 

 着弾!


 ボンとはじけて、ヒッポカムポスのからだが燃え上がる。

 数体のヒッポカムポスが火に包まれて、断末魔の悲鳴をあげて燃えていく。

 でも、くねくねとした予想しにくい動きで逃げまわるヒッポカムポスを、しだいにローガンの火球は捉えきれなくなってきた。


「だめだ。あいつらすばしっこすぎる」

 ローガンは悔しそうに顔をゆがめた。

「だったら、ぼくがあいつらの動きをとめます」

「すまねぇ、ビジェイ。頼む」


 ビジェイが地面に手をあてがった。

 とたんに地面表層がパキパキと音をたてて、凍りはじめた。あっというまに数万人が戦いを繰り広げている平原を越えて、ヒッポカムポスたちがいる方角へむかう。


 だけど、あともうすこしで氷の切っ先が届こうとしたところで、ヒッポカムポスが口元からなにかを吐きだしはじめた。

 

 なに?


 と思った瞬間、ハンニバルの側近がうしろに跳ねとばされたのが見えた。


 え?


 そのとたん、わたしは強い力で地面に押し倒された。

 父だった。


「みんな、伏せろ!! 水の弾丸だ!!」

 ビジェイの叫び声でなにが起きたかわかった。

 ローガンが地面に這いつくばりながら言った。

「くそう。あのバケモンの標的は、はなから兵士なんかじゃなかったんだ」

「ああ。抜かった」

 父がわたしの背中に手をやったまま言った。

「ハンニバルか、要引揚者のリスクスの命を奪うほうが早いと気づかれたようだ」

「CEO、どうすれば?」


「ローガン。おまえはハンニバル将軍を守ってくれ」

「了解しやした。炎の盾なら、あのくらいの水の弾丸なんぞ造作もありゃしません。ですけど、そのあいだ攻撃はできやせんぜ」

「わかっている。ビジェイに頼む」

 ビジェイが伏せたままこちらに顔をむけた。


「ガードナーさん。簡単にはいきません。どうやら海のモンスターとわたしの『力』は相性がわるいようです」

「どういうことだ?」


「ヒッポカムポスのやつら、わたしが地下に送り込んだ水脈をたどって、こちらに潜ってきています」


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