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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
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第24話 ファイアー&アイス

 ビジェイが湖へむけて手をつきだした。

 たちまち氷の上を走っていた兵たちの足元へ、冷気の塊がまとわりついて、膝から下を凍りつかせた。ローマ兵もカルタゴ兵もなかった。みな走っていく姿勢のまま、足だけが自由がきかなくなっていた。


「OK。あんがとよ」

 ローガンはそう言うと、手を前につきだして、指を鳴らした。


 そのとたん、氷の上をころころと、無数の火の玉が転がっていった。その火の玉はカルタゴ兵の足元に転がっていくと、足を縛りつけていた氷を溶かしはじめた。


 が、ローマ兵にむかった火の玉は、からだの上まで跳ねあがり——


 その身に火を放った。



 それはまるで地獄絵図だった。

 いたるところで人が燃えていた。

 身動きできず生きたまま、ローマ兵たちが焼かれていた。



 たちまちトラジメーノの湖畔は断末魔の声で埋め尽くされた。



 からだが自由になったカルタゴ兵は、自分の足をさすりながら、あちこちで焼け落ちていくローマ兵を呆然とした面持ちで見ていた。


「あいかわらず、エグいね。ローガンのやり口は」

「ふん、結果のために手段を選ばんのは、お前さんのほうがうわてだろうが」

「まぁ…… 否定はしませんよ」


 


 この戦いは約三時間で決着がついた。

 本来の歴史とは全然展開はちがったけど、すくなくとも歴史通りの時間で片がついた。


 凍った湖を覆いつくすように、立木がつきだしていた。そしてその木のどれもが炭と化していて、ぶすぶすとくすぐり、煙があがっていた。


 わたしにはそう見えた。


 でも実際は、その木に見えるものは、身動きできなくなったローマ兵で、生きながら焼き殺された死体だった。


 焼死体の木立——


 そう呼ぶしかない、まさに酷い光景だった。



 それから一時間ほどして、ハンニバルは騎馬にまたがって湖畔の道を戻ってきた。彼はわたしたちの姿を見つけるなり、早馬で駆けてきた。


「おお、アダム。今回の戦い、そなたらの力のおかげときいているぞ」

 まず父の手をとった。

「いえ、ハンニバル将軍。わたしはなにも。敵兵の存在を知らせるためにクアドリガトゥス銀貨の雨を降らせたのはわが娘、エヴァ。湖に追い立てられたカルタゴ兵を湖面を凍らせて救ったのはビジェイ、そしてローマ兵を焼き殺したのは、ローガンです」


「おお、そうか。それにしてもおそろしき力だ。そなたらがいなければ、わがカルタゴ軍はここで全滅しておったろうよ」

「将軍、本来の歴史とはちがう動きがおきております。これは歴史に人知を超えたものが介入してきた証です」


「そなたらが悪魔と呼んでいるヤツラか?」


「はい。ですから次の戦いも注意が必要です」

「次の戦い?」


 ビジェイが前に進み出て言った。


「あなたがローマを滅亡直前までに追い込んだ……」



「カンナエ(カンネー)の戦いです」

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