表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
783/932

第18話 ジョウント酔い

 わたしたちはそのトラシメヌス湖畔に立っていた。


『ジョウント』と呼ばれる現象だ。

 歴史的に重要ではない日常の月日を一気に飛び越えて、そのイベントが起きる直前に飛ばされる現象——


「ジョウントっていうヤツは、なんど味わっても胸がムカムカするな」

 ローガンが腹立たしげに言った。

「一瞬でしょ。それくらい我慢しなさい」

「エヴァ、おまえはなんともないのかね?」

「ええ。お父様。ちいさい時からダイブしてますからね。すっかり馴れたものです」

「ふん、『ジョウント酔い』を味合わなくていいってぇのは、まったく羨ましいことだな」

「子供の頃から精神へのダイブをさせられてるのを、うらやましがられても、わたしちっとも嬉しくありませんわ」

 わたしは父の顔をにらみつけるようにして言った。


「エヴァ、わ、わたしが強要したわけじゃない。佳奈子、おまえのママが……」


「言い訳はいいわ、パパ。それよりハンニバルさんのところへ行きましょう」

「だがどこにもカルタゴ兵の姿が見えんぞ」

 父があたりを見回しながら言うと、ビジェイが答えた。


「すでにこの湖畔の丘陵の林の陰で息を潜めているはずです」

「んじゃあ、ハンニバルさんは先頭のほうにいるってことぉ?」

 わたしは湖の東端のほうを見ながら、ため息をついた。湖畔は一直線に伸びているのに、その終わりがこっちからは見えなかったからだ。

「ビジェイ、この湖、どれくらいあるの?」

「エヴァ。この湖はイタリアで4番目におおきな湖で周囲は60キロメートル近くある。たぶんハンニバルがいる東の端まで余裕で10キロメートル以上はあるだろうね」


 わたしはもう一度、さっきより深いため息をついた。

「はーー。ジョウントするなら、そのあたりに降ろしてもらいたかったわ」

「しかたないのだよ、エヴァ。我々がこの世界に降りたつのは、要引揚者がいる近くになるのだから」

「嬢ちゃん、歩くのが苦痛なら、オレがおぶってやろうか」

「この世界で子供扱いはよしてよ、ローガン。ちょっとグチっただけ。自分の足で歩くわよ」

「わかりました。お嬢ちゃん」



 ハンニバルを探しだすと、彼は左目に眼帯をつけていた。

「おお、未来人たち。アダム、ローガン、ビジェイ、そしてエヴァ。再会できて嬉しいぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ