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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
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第16話 次の勝ち戦の場は、どこか教えてくれるかね

 不利な条件にもかかわらず、精強なローマ歩兵はカルタゴ歩兵を相手に優勢に戦闘を進めていた。しかし、両翼ではヌミディア騎兵を中心とするカルタゴ騎兵が、ローマ騎兵を圧倒し、じりじりと中央へと押し込んでいた。

 やがてローマ騎兵を撃退すると、ヌミディア騎兵はローマ軍の側面に回りこんだ。完全に包囲されると判断したローマ兵たちは、パニックに陥り敗走をはじめる。


 そこにハンニバルの弟マゴ・バルカの軍勢が襲いかかった。


挿絵(By みてみん)


 林のなかに伏兵として潜ませていた分隊だった。

 完全に包囲されたローマ軍は圧倒的な劣勢に陥り、周辺部から損害を増加させていった。

 執政官ロングスは突破口を探し、正面のガリア歩兵に対して戦力を集中させた。

 なんとかカルタゴ軍中央を突破したローマ軍はそのまま撤退した。


 しかし、およそ半数が包囲下に取り残され、殺されるか捕虜になった。



「こちらにもずいぶん犠牲者がでたわ!」

 岸辺を埋め尽くす死体を眼下に眺めながら、わたしは口をとがらせた。


「だが、敵の損害のほうが甚大だ。そうだろう?」

 ハンニバルは満足そうだった。


「ええ、すばらしい戦果です。将軍」

 拍手をしながら、そう讚えたのは、よりにもよって父だった。

「ローマ側の戦死者は2万人。捕虜1万人ですよ」


「1万人も逃したか。では完勝とはいかんな」

「ですが、こちらの被害は6000人程度。しかもほとんどがガリア人です。将軍が引き連れてこられた兵の損失は軽微です」

「だが象は一頭だけになってしまった。あれだけの犠牲をはらいながら、アルプス山脈を越えてきたというのに。そなたらが未来の力を使って加勢してくれていれば、もっと楽に勝てた」

「将軍、それはできねぇよ」

 ローガンが声をあげた。

「オレたちの任務はガリア人のリスクスを死なせねぇことだ。もしカルタゴ軍が負けそうになって、ヤツの生命に危機が及ぶようなことがありゃあ、そりゃオレたちも戦うさ。だがこの戦いは、カルタゴが大勝利するってわかってンだ」


「歴史のままにまかせるってことだな。わかった。ローガン、そなたの言う通りだ」


「まぁ、こっちだって、リスクスのヤツを抑えるのが大変だったんだがな」

 ローガンが恨みがましい口調で言うと、ハンニバルはしたり顔で答えた。

「目の前で数千もの同胞(ガリア人)が討ち死にする戦いを繰り広げたのだ。勇敢さを重んじるガリア人には、たぎる気持ちを抑えておくことなどできようはずもない」


「ああ、オレもあいつの気持ちはよくわかる。だが、こんなにガリア人が死んだ戦いに、ヤツが参加させるわけにはいかねぇ」


「ああ、あの男は勇猛な男だ。たぶん先陣を切って飛び込んで、真っ先に命を落としていただろうな」

 ハンニバルはそう言うと、ビジェイのほうへ目をむけて言った。


「ビジェイ、次の勝ち戦の場は、どこか教えてくれるかね」


 ビジェイは一歩前に進みでると、なかば苦笑い気味に言った。



「次に勝つ場所はトラシメヌス湖畔の戦いです。将軍」

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