表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ7 第二次ポエニ戦争 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
778/932

第13話 みな、この勝者を讚えよ!!

 やがてふたりのガリア人が選ばれ、ハンニバルの前で殺し合いをはじめた。ふたりとも山越えで、おそろしく衰弱していたけど、野獣のような目で相手にむかって剣をふるった。

 勝者は若い男だった。

 ハンニバルはその男の腕をとり、大声で叫んだ。


「みな、この勝者を讚えよ!!」


 カルタゴ軍の兵士たちは手をたたき声をあげて、若きガリア人を讚えた。ハンニバルは地面によこたわる息絶えた敗者を指さし言った。


「この敗れた勇気ある者をさらに讚えよ!!」

 そのことばに導かれて、兵士たちはさらにおおきな称賛の声を、物言わぬ勇者に投げかけた。


「この男は、諸君たちである!」

 ハンニバルのひと言で、それまであがっていた歓声がピタリとやんだ。


「これから進む我が軍の前には大河があり、左右には海、そして背後にはアルプス山脈がそびえたっている。われわれはいま決闘した者たちと同じように逃げ場はなく、勝つか死ぬかしか選択肢がないのだ」

 兵士たちがごくりと咽喉をならす。

「だが、もしこの戦いに勝つことができれば、ローマのすべてを手に入れられる」


「今ここでわたしハンニバル・バルカはみなに約束しよう」


「この戦争に勝利することができたときは、そなたらの子の代まで税を免除し、土地や金貨を与えよう」

 兵士たちがざわついた。

「さらに兵士についている奴隷たちよ。そなたたちが戦いを望むのなら自由民としよう。そして戦いに勝ったときには、ひとりにつき2人のローマ人奴隷を与えよう」

 奴隷となっていたガリア人が、雄叫びをあげた。それまで感情を抑えていたカルタゴ兵たちも、腕をつきあげて喚声をあげた。


 地をゆるがすような、男たちの声に圧倒されて、わたしはおもわず両耳をふさいだ。

 それは士気が高まるというレベルじゃなかった。


 なにかに取り憑かれたような熱狂——

 みなボロボロで困憊していたはずなのに、そこにはまぎれもない『生』があった。

 アルプス越えで3分の2の2万6000人まで戦力に減っていたはずなのに、彼らはみなハンニバルに言う通りになると、信じきっていた。


 

 ハンニバルには人々になにかを憑依(ひょうい)させる、天賦の才能があったんだと思う。




 そこからのカルタゴ軍が破竹の勢いを得るのは、歴史が証明している。


 最初の戦いはティキヌスの戦いだった。 

 騎兵を率いて偵察にむかったハンニバルは、偶然偵察にでていたローマの執政官と遭遇し、そのまま戦闘に突入した。


 ビジェイがこの戦いは、カルタゴ軍が勝つから、心配しなくていい。というので、わたしたちは、後方でリスクスの護衛に徹した。

 わたしはローガンに肩車してもらって、後方から戦況を眺めていた。

「兵士の数はどれくらいなのかしら?」

 ビジェイがかなたに目をやりながら言った。


「カルタゴ6000、ローマ4000と伝えられている。なにせ偵察部隊同士の偶発的な戦争だったからね。きわめて小規模な戦いだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ