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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第287話 ツイスト 思いがけない真相6

 エヴァは腸が煮えくりかえる思いだった。


 自分たちが要引揚者救出のため、下にも置かない扱いをしてきたというのに、こんなカミング・アウトをされては、悔しさしか残らない。メンバーを見回す。

 セイはぐっと歯噛みしたまま感情を押し殺していたし、スピロとゾーイは顔色をうしなったままだった。たぶん自分もおなじようなものだろう。

 だが、マリアだけは、皮肉な成り行きを楽しんでいるように、にやついていた。


「でもさ……」

 ネルはひとしきり笑い終えると言った。

「あいつもあわててエドウズを殺して困ったンだろうね。せっかく『アン』つながりで殺してたのにさ。最後のひとり、メアリー・ジェーン・ケリーは、つなげ切れなかったみたいさ。まぁ、『メアリ』はそれまで何度もでてきてるから、メアリつながりってことかもね」


「いいえ、ネル様……」

 スピロはネルに冷たい目をむけた。

「キャサリン・エドウズ嬢の本名は、ケイト・ケリー。おそらく次の犠牲者、メアリー・ジェーン・ケリー嬢の『ケリー』をつなげたと思います」


「ふうん。なるほどね。ま、それのほうがその『見立て殺人』っぽいね。ま、どうでもいいけど。あははははははははははは……」

 それは心の底からの笑いだった。

 エヴァにはそれが耳障りで、耳障りで仕方がなかった。


「やっとわかりましたわ」

 スピロがネルの笑いを断ち切るように、声をあらげた。

「あなたが……なぜ、切り裂きジャックの手にかかったか」


「そう。やっとわかったンだ。そりゃ、そうだよね。あたいが逆の立場でも、ぶっ殺してやろうって思うもの。自分の殺人美学を邪魔されたあげく、やってもない殺人まで自分の犯行にされちゃって、しかもそれが咽喉を切っただけの、しょぼい殺人って……」

 ネルは最後まで言い終える前に、プーッと吹きだした。


「はい。その通りです」

 スピロはケタケタと笑い転げるネルを見ながら、冷徹な声で言った。

「あなたを殺すまで時間が空いたのは、おそらく切り裂きジャックがあなたを特定するまでにそれだけ時間がかかった、ということなのでしょう」

「でしょうね。でももう切り裂きジャックは、チャールズ・レクミアはもういない。おっ死んじまったんだからね」


「見事に逃げおおせた、ということですね」

 ため息まじりにスピロが言った。それは全面降伏の白旗をあげているように、エヴァには感じられた。


「どうでもいい!」

 マリアが大声をあげた。

「こいつがどんな悪党だろうと、どーでもいい。要引揚者の魂がこれで解放されるンだったらな。ほら、現世の魂が抜け出しはじめた。オレたちも帰る時間だ」


 ネルの頭上をみた。

 頭の上から半透明の中年の黒人女性の幽体がゆっくりとでてきはじめていた。要引揚者の女性エリザベス・ブロンテの、前世に捉えられた魂が、現世に帰ろうとしている。


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