第281話 あなたの名前を使わせてください!
ピーと出発の合図の笛が鳴った。
「リンタロウさん、はやくしないと乗りそこねちゃいますよ」
ネルがモリ・リンタロウに声をかけた。
「ああ、ネルさん、あなたもお元気で。お世話になりました」
「なに言ってるの。お礼をいうのはこっちよ。それにあたしは殺されないことになったの。しばらくは元気でいられるわ」
そう言ってネルがにっこり笑った。
リンタロウは名残惜しそうにしながらも、タラップをのぼりはじめた。
そのとき、コナン・ドイルがリンタロウにむかって大声をあげた。
「リンタロウさん! あなたはいい相棒でしたが、けっしてワトソンみたいなホームズの脇にいる存在じゃないですよ。ホームズに匹敵するくらいスゴイ人物です。ホームズのライバルになるくらいのね」
「ありがとう!」
リンタロウが手をふった。
「決めました。あたしゃ、あなたをモデルにさせていただきます。あなたとの友情の証にね。えーっと、あなたのペンネーム、なんて言いましたっけ」
「ペンネーム? いっぱいありますが……」
「一番気に入ってるものをおしえてください」
「それだったら鴎外です。モリ・オーガイ」
「なんですって?」
「モ・リ・オー・ガ・イ」
「モ・リ・アー・ギー? モリアーギーですね。モリアーガイ…… モリアーガイ…… これちょっと発音しづらいですね。そうだ……」
「モリアーティ!!!!」
「モリアーティー?」
「ええ。名探偵シャーロック・ホームズの終生のライバルの名前ってぇのはどうでしょう? そう、希代の悪党にして、ホームズを超えるほどの天才なんてぇのは」
「いいじゃないですか」
「じゃあ、これにリンタロウさんの名前を使わせてもらっていいですか?」
「もちろんですよ。ありがとう。とってもわくわくしてきました」
モリ・リンタロウは嬉しそうに笑って、タラップをあがっていった。
そのやりとりを聞いていたセイは、スピロと顔を見合わせていた。スピロだけでなく、マリア、エヴァ、ゾーイ、全員と自然と目が合っていた。
だれも信じられない、という表情をしていた。
たぶん、自分もそんなまぬけな顔をしている、と思ったら、つい吹きだした。それにつられてほかの面々も笑いだした。
怪訝そうな表情をしているコナン・ドイルやワイルド、マシュー・バリーたちをよそに、サイコ・ダイバーズの全員が大声でわらった。
誠に申し訳ございません。
作者急病のため、定期アップをしばらく中断します。
一週間ほどで戻れると思いますが、よろしくお願いいたします。




