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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第278話 ベーカー街とはおさらばってことですね

「でも切り裂きジャックが捕まったってことは、あたしは殺されずにすむ、っていうことですね」

 ネルが心底ほっとした口調でぼそりと呟いた。


「ええ、ネル様。大丈夫でしょう」

「スピロ、ほんとうかい?」

「はい、セイ様。レクミアのそのほかの事件当時の足取りも、すでに把握済みです」

「ほかの事件?」


「デュー刑事にお願いして、あの男の身辺を調べていただいたのです……」


「第一の事件のメアリー・アン・ニコルズ嬢の事件はもちろん、その前におきたマーサ・タブラム嬢の事件、そして2番目のアニー・チャップマン嬢が殺害された3つの通りは、彼の自宅の住所、家族への訪問経路、通勤経路上にあり、これらの事件発生推定時刻とほぼ同時刻に、通りがかっていることが判明しました」


「それはほんとうなの?」

 ネルが目をおおきく見開いた。

「ええ。それだけではありません」


「三番目の事件、エリザベス・ストライド嬢と、四番目のキャサリン・エドウッズ嬢が同夜に殺された、いわゆる『ダブル・イベント』の日は、彼が唯一仕事を休んだ土曜日だったのです。しかもストライド嬢の殺害現場は彼が育った地域で、エドウッズ嬢の殺害現場までの道のりは、彼が20年間使ってきた通勤ルートでもあったのです」



「でもなんと言ってもお手柄だったのは、ピーターです。ピーターが切りつけられながらも、その腕に刻まれた特徴的なタトゥーを目撃したおかげで、犯人を特定できましたし、その裏をとることもできたのです」



「ま、まちがいねぇじゃねlーか」

 マリアがポカンと唖然とした表情のまま、驚きを口にした。

「ええ、たしかに間違いないですわね」

 エヴァも首を小刻みに揺らしながら首肯した。



「それにしても迂闊でした。犯罪においては『第一発見者を疑え』は鉄則でしたのに」

「そうなんですか? あたしはそれだとすぐ犯人がわかっちまうと思うんですがねぇ」

「コナン・ドイル様、それはミステリの世界ではありません。実際の事件においてです。ミステリは読者の目をひく不可能犯罪をつまびらかにする必要がありますが、実際の事件というのは、総じてもっと単純なものなのです」



「スピロさん、でもあのベーカー街とは、おさらばってことですよね」

 ネルが顔をくもらせた。


「ええ。わたくしたちもこの世界を去りますから」



「あーー、あのふかふかのベッドが恋しくなりそうだわ」


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