第239話 スピロ捕まる
「トライポッド?」
そう言ってセイがふりむいた時だった。
トライポッドの頭から垂れ下がっていた数本の触手がふいに動いて、スピロのからだに巻きついた。
「きゃっ!」
トライポッドの触手
あっと思ったときには、すでに十メートル以上も上に持ちあげられていた。
セイは瞬時にジャンプした。スピロを掴んだ触手を叩き切ろうと剣をふるう。が、横から殴りかかってきた別の触手に邪魔をされた。セイは空中でからだをひねって、横殴りしてきた触手に刃をむけた。
剣が触手を斬り落とす。
切り口から火花が飛び散り、機械部分をあらわにしたまま落ちて行く。が、勢いを削がれたセイのからだも斬り落された触手とおなじように落ちて行く。
セイは地面に降りたつと、すぐにトライポッドのほうへ向き直った。
トライポッドはスピロをつかんだまま、すでに動き始めていた。セイはトライポッドのほうへ駆け出そうとした。
「セイ様、透明人間がいます!」
うしろからエヴァが叫んだ。
目を凝らす。
たしかに投げかけられた光のなかに、屈折して見える光が動いているのがわかる。
くっ!
「心配しないでください。これはただの時間稼ぎです!」
上のほうからスピロの叫び声がふってきた。精いっぱい声をはった警告だ。
「セイさん、バイクに乗ってください。空から追いかけましょう」
背後からエヴァが提案してきたが、セイはエヴァに指示をした。
「いや、エヴァ。きみはマリアとゾーイを探して、スピロを助けにむかってくれ。ここに現われる予定の切り裂きジャックの正体を暴くことのほうが重要だ」
「ひとりでは効率がわるいですわ?」
「ネルさんにも協力してもらう」
ふいに名前をだされて、ネルがセイのほうに目をむけた。
「スピロの言うとおり、これはただの時間稼ぎだ。うかつにスピロを追いかけたら、切り裂きジャックの正体がわからないままになる」
「それならここへマリアさんとゾーイさんを連れてきます。みんなで見張れば、切り裂きジャックは捕まえられますわ」
「ああ…… わるい考えじゃないね。でもゾーイはともかくマリアは無理だよ」
セイのことばにエヴァもすぐに合点した。
「ま、そうですね。あんな怪物が現われたのでは、マリアさんは言うことをきいてくれないでしょうね」
エヴァはバイクを上昇させはじめた。
「セイさん、どうされますの?」
「ぼくは……」
セイは天に手をつきあげながら言った。
「切り裂きジャックが現われるまで、ここにいる見えないお邪魔虫を、できるだけ排除しておくよ」




