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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第230話 今回の悪魔はしたたかですね

 そのひとことで通りは一気に騒がしくなった。


「なんてことだ!」

「女性が殺されたって……まさか、例のレザー・エプロンの仕業じゃあ……」

「酔っぱらって寝てるだけじゃないのかね?」


 エヴァはこの連中が何者か気になったので、スピロに小声で尋ねた。

「この方たちはどなたたちですの?」


「たしか、国際労働者教育クラブという組織の労働者です。祖国を迫害されて追放されたロシアやポーランド、ドイツのユダヤ人たちによる組織です。この事件の当日、土曜日の夜はこのクラブハウスで集会が開かれていて、討論会や勉強会をおこなっていたそうです」


「だれか警官を探してきていただけますか?」

 スピロが叫ぶと、数人が目で示し合わせて、いくつかの方角へ走り出した。残った連中は興味深げにエリザベス・ストライドの死体を覗き込んでいる。


「さて、どうしたものでしょうか?」

 スピロが意見を求めるような視線をエヴァのほうへむけた。

「今日はもうひとつ事件が起きるのでしょう? ここにいて警察を待っていても、仕方がないのではないですか?」


「そうですね。本来の事件よりも時間を早められているようですから、ことは急を要するといっていいかもしれません」


「じゃあ、次の事件もはやまるはずだ。急がないと」

 セイがスピロを促すような口調で言うと、スピロがかるくうなずいた。

「ええ。わたくしたちは、ダブル・イベント、第四の事件でなんとか切り裂きジャックを捉えねばなりません。すぐにゾーイにテレパシーで現場にむかうよう指示します」

「待ってはいられませんわよ。わたしのバイクを使いましょう」

「はい。エヴァ様、よろしくお願いします」


 エヴァはハンドルをひねると、バイクのヘッドを反対側にむけた。エリザベス・ストライドの死体を照らし出していたライトの灯がはずされて、死体を覗き込んでいた労働者のあいだから、不満の呻き声があがった。

 

 エヴァはそんな声を無視するようにセイに言った。


「それにしても、今回の悪魔はしたたかですね。裏をかかれてばかりですわ」

「ああ、ほんとうに今回はうまくいかないことばかりだ」


「でもわたくしは腹立たしくは思っておりませんわ」


「思うようにいかないことだらけの事件くらい、やる気をかきたてられるものはないですからね【バスカヴィル家の犬】」


 エヴァはハンドサインで、ネルに後部座席に座るように促しながらスピロに尋ねた。

「で、どちらへいけばいいの?」




「ウエストエンドです」


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