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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第229話 第三の犠牲者 エリザベス・ストライド

 エヴァはすぐにあたりを見回した。


 もしかしたら、まだ切り裂きジャックがあたりに潜んでいるかもしれない、と思ったからだ。だが、それほど狭くもない通りにもかかわらず、あたりには、まったくひとけがなかった。バケモノに追われて逃げてきていた人も、ここには立ち入ってこなかったらしい。


 まったく、犯行現場には邪魔をいれないようにしてたっていうわけですか……


「エヴァ様、ネル様!」

 横たわった女性の様子を覗き込もうとした瞬間、背後から声をかけられてエヴァはびくりとからだを震わせた。


 スピロだった。セイも横にいる。


「セイさん、スピロさん。残念ながら、遅かったようです」

 エヴァがそう言うと、スピロが表情をかたくした。

「そんな! まだ犯行時間にはなってないはずです」

「時間をずらされたんだよ。スピロ」


 スピロが倒れている女性のかたわらにひざまずくと、顔や傷口を覗き込みながら言った。


「まちがいありません。エリザベス・ストライド嬢です」


「咽喉を掻き切られていますが、それ以外に傷はなく着衣にもめだった乱れもない。まだ殺されてそんなに経っていない。史実通りです」


「そんなに時間が経っていない? まさか……」

 エヴァはスピロのことばに、目を白黒させた。すぐにネルのほうをふりむいて叫ぶ。


「ネルさん! あなた、犯人を見たんじゃないですか!!」


「エヴァ様、どういうことです!」


「ネルさんが第一発見者なんです」


 スピロの瞳孔がひらくのがわかった。


「ほ、ほんとうですか? ネル様、あなたはだれか……いえ、切り裂きジャックの姿を見たのではないですか?」

 

 ネルはエヴァとスピロに立て続けに詰め寄られたせいか、顔が蒼ざめてみえた。

 当然といえば当然だ。なにせ目の前に死にたての死体が転がっているのだ。


「あ、いえ……うしろ姿らしきものは見たのですが……顔とかは見てないので……」

「うしろ姿! どんな格好をしていました?」

「暗くてよくわからなかったですが、黒っぽい長いコートのようなものを羽織っていたような」

「そもそも、なぜ、この場所に?」


「スピロさん、わたし、必死に逃げてきたんです。ホワイトチャペルにモンスターが現われたものだから。スピロさんに第三の事件はバーナー・ストリートで起きるって聞いてたから、ここにくればだれかと落ち合えるんじゃないかって思って……」


「ネルさん、ずいぶん危険なことを!」


 今度はセイが強い口調で言った。ネルはそれと同等の口調で返してきた。

「でも、あたしはここでは死なないんでしょう! もし切り裂きジャックにでっ食わしても、殺されないはずでしょ!」


「たしかによい判断です、ネル様。ここで殺されるのはこのエリザベス・ストライド嬢ですからね。ですが、巻き添えをくって、怪我をする可能性はありましたよ」


「ええ、まぁ……たしかに……そうですが……」


 そのときクラブハウスのなかから、ぞろぞろと労働者たちがでてきて声をかけてきた。


「あんたら、なにを騒いでるんだ?」


 時間はもう日をまたいでいるというのに、十人以上もの労働者が現われたのに、エヴァはおどろいたが、ネルはその連中にすがりつくようにして訴えた。



「そこで女性が死んでるんです」

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