表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
692/932

第217話 アニー・チャップマンの遺体

 犯行現場に近づくと、フレッド・アバーライン警部が駆け寄ってきた。

「セイさん、皆さん、待っていましたよ」

 我慢できなかったのだろう、スピロが急ぎ足で近づいていき尋ねた。

「アバーライン様。犯行はいつごろ起きました?」

「ああ、スピロさん。まだはっきりと断言はできんが、朝5時半頃だと思う。そこにいるアンドリュー巡査が深夜巡回中に発見した」


「5時半頃…… 本来の犯行と時間はおなじというわけですね」

「今回は場所だけを変更してきた、ということですね」

 エヴァがため息まじりに言った。


「アバーライン様。アニー様を見てもよろしいでしょうか?」

「ああ、ぜひ。すでに嘱託医のフィリップス医師が仮検死をおこなったあとだ。もうすこししたら、オールド・モンタギュー・ストリートの死体仮置き場に運ばれる予定だから、手早くお願いするよ」



 アニー・チャップマンは、一気に咽喉を切り裂かれたメアリー・アン・ニコルズとちがって、抵抗したあとが残っていた。

 彼女は手も顔も血まみれだった。長い黒いコートとスカートはたくしあげられ、下腹部は露出させられていた。腹部はめちゃめちゃに切り裂かれていて、腸が引きずりだされ、それを右肩のうえにかけられていた。

 セイはその凄惨な死体に顔をそむけそうになった。


「子宮、膣の上部、膀胱が抜き取られて、持ち去られているはずです」

 スピロが死体の脇で子細に検分しながら言った。あらぬ方向にねじれているアニーの頭のほうに目をむけた。首にはなぜかハンカチが巻かれている。

「頬に擦過傷がありますね。背後から口をふさがれたときに、揉みあって切ったのでしょう。かなり抵抗したようですが、咽喉を掻き切られてしまっては、どうしようもなかったことでしょう」


「殺害後、犯人は首を切断しようとしたようですが、気が変わったのか、時間がなかったのか、途中でとりやめています。ハンカチがあてがわれていますが、ほぼ切り離されています」

 セイは変な向きを向いているアニーの頭の理由に合点がいったが、とても長いあいだ正視してようとは思わなかった。それはエヴァもゾーイもおなじらしく、さりげなく視線をはずしている。

 ただマリアだけは、そういう耐性にすぐれているらしく、近づいてまじまじと見ていた。

 

「場所こそ異なっていますが、史実とまったくおなじ殺され方をしているようです」

 スピロが立ち上がりながら言った。

「これで切り裂きジャックの正体を特定するチャンスは、あと二回となってしまいました」


「スピロ、これからどうするつもりなんだい?」

「次の犯行、第三、第四の犯行が続けざまに行われる『ダブル・イベント』は約一ヶ月後です。悪魔はたぶん時間を早めてくるでしょうけど、まずは今回のことから、次回の作戦を練らねばならないでしょう」


「お姉さま、でも次回は、こちら側が圧倒的に不利なんじゃないかい」



「ええ、わかってます、ゾーイ。二箇所で殺人が起きる上、凶行現場がイーストエンドとウエストエンドと、やや離れた場所になります。人手があればと思うのですが、今回同様、文士の方々の協力は得られないでしょうから、きびしいでしょうね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ