第204話 セイ対レッド・ドラゴン3
おそらくその刀剣の柵は、レッド・ドラゴンに簡単になぎ払える程度の強度かもしれないし、3メートルもの身長であれば、ひとまたぎできなくないだろう。
だが、この柵はその無駄な動作をうみだし、寸刻かせぐのが目的なのだ。そういう割り切った判断もふくめて、ゾーイはセイの能力に舌をまいた。
両側にきずいた刀の柵で切りわけた狭い空間は、中空から戻ってきたレッド・ドラゴンたちを、みごとに寄せつけなかった。からだを貫いて刺さったままの刀身が、刀の柵にひっかかって邪魔をしてくれた。苛立ったレッド・ドラゴンは上段の刀を横になぎ払ったが、ガチャガチャと音をたてて路面に転がった頃には、ゾーイたちはその場をとっくに駆け抜けていた。
正面からレッド・ドラゴンが押し寄せてきた。
「セイさん、あたいにまかせておくれ!」
ゾーイはスピロとネルの手をふりほどくと、地面に手を触れて力を路面にふきこんだ。路面をぐにゃりとゆがませると、正面のレッド・ドラゴンたちにむけて波打たせた。
正面から突っ込んできていた十体ものレッド・ドラゴンたちが、バネにはじかれたようにパーンと中空にはね跳んだ。
斜めにひねりを加えていたので、レッド・ドラゴンは横の建物の壁にドーンという音をたてて激突し、レンガにめりこんだ。
レンガの欠片があたりに飛び散る。
数体のレッド・ドラゴンは横壁への激突を回避したが、通路の上をとおる二階の回廊の壁への激突は避けきれなかった。回廊のレンガを削り取って地面に叩きつけられた。
「ゾーイさん、攻撃もすごいじゃないですか!」
ネルがおもわず感嘆の声をあげた。
「もちろんです。ですから、ずっとあなたを間近でお守りさせていたのですよ」
スピロがまだすこしばかり息を切らしながらも、とても晴れがましい表情でそう言った。
ゾーイも誇らしい気持ちになった。が、そんな感情に浸っていられない。
今はネルとスピロを守るのに集中を切らしてはならないのだ。
「ネルさん、感心するのはあとにしておくれ。また走るよ」
通路の角をまがっても、レッド・ドラゴンの列は切れなかった。
セイの刀剣の柵は先回りして、進路を切り開いたが、今度はレッド・ドラゴンは羽根をひろげると宙を飛んで対抗してきた。
刀剣の柵の上から襲いかかってくる。
「セイさん。空からだと、あたいの力も限定されちまうよ」
ゾーイは苦しい息の下から、危機を訴えた。
「まかせて!」
セイは手を上にあげると、そのまま前方につきだした。
空中からあらわれた数百もの日本刀が、剣と剣のあいだに横倒しではまっていき、屋根のように次々と上部分をふさいでいった。




