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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第198話 なんで娼婦の客引きを見てなくちゃならねぇんだ

「ああ、ジョン。ちょっとお金を……いえ、ヴォクスホールにいる妹のところへ行くところなのよ」

「ヴォクスホールに妹さんがいんのかい?」

「ええ」

「ふーん、そうかい。こんな真夜中だ。気をつけて行くんだよ」


「みなさま、あとをつけましょう」

 スピロのことばに促されるようにして、セイたちはアニーの尾行をはじめた。

 

 アニーの行動はどうみても妹のところへ向う、というものではなかった。あきらかに客を物色している様子で、街角に立って行き交う男のほうへ目をむけたり、脈がありそうだと声をかけたりしていた。


「なんでオレたちが、娼婦の客引きをずっと見てなくちゃならねぇんだ!」

 マリアが忌々しそうに言うと、ネルがため息交じりに言った。

「マリアさん。わたしたちも好き好んで、こんな商売をやっているわけではありませんのよ。一日、一日、生きるのに必死なのです」

「まぁ……なんだ、その……」

 正面きって抗議をうけて、マリアがめずらしくしどろもどろになった。雰囲気がわるくなりそうだったので、セイはなにか言おうとしたが、ふいにあたりの臭いが変化したことに気づいた。


「みんな、気をつけて。敵の臭いがする。仕掛けてくるよ」


「あぁ…… 邪魔者の登場の味がするな」

 そう言ってマリアが指先をぺろりと舐めると、エヴァがそれに続いた。

「はい。邪魔者の色が漂って見えます」


「では皆様方、お気をつけください。今度の敵は前回より手強いかもしれません。たぶんわたしたちを邪魔だてするのはブラム・ストーカー様の創造物でしょうから」

「スピロ! まさかドラキュラなのかい?」

「お姉さま、だったら、楽勝なんじゃないかい。ドラキュラって血を吸うだけなんだろ」

「ゾーイさん、原作のドラキュラは、オオカミやコウモリに変身しますわよ」

「それなら、もっと楽勝じゃないのかねぇ」

 ゾーイの感想にエヴァが異議を唱えた。

「そうですか? わたしは等身大のコウモリは……できれば勘弁願いたいですがね」

「そうか? エヴァ。オレは『G』でなきゃ、なんに変身されて……」


 ドスン!


 重々しい音がして、地面がゆれた。

 アニー・チャップマンがむかっていった通りの方角だった。

 数十メートルむこうの街路になにかが突き立っていた。人間の背丈ほどの物体。それが道路にめり込んでいた。

 毒々しい赤色——

 その物体から湯気のようなものがあがっている。


「あ、あれ、なんですの?」

 不安げにネルが声をふるわせた。ゾーイが啖呵をきる。

「ネルさん。心配しないでおくれ。あたいらが守るからね」


 その赤い物体がゆっくりとたちあがった。

 それは筋骨隆々とした裸の男に見えた。

 

 だが、その体躯は3メートルほどもあった。

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