表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
658/932

第183話 エレファントマンとの出会い1

 ロンドン病院(現ロイヤル・ロンドン病院)——

 ホワイト・チャペル駅から降りて、5分ほどの場所にあるその病院が、ジョゼフ・ケアリー・メリック、『エレファントマン』の家だった。


 モリ・リンタロウの日本国陸軍のつてとやらは、おもいのほかつよく、2日と経たずして、メリックの担当医師フレデリック・トレヴェスから連絡があった。


「あいかわらず、この場所は臭くて、汚くて、へどがでそうな街だな」

 ホワイトチャペル駅につくなりマリアが悪態をついた。

 だがその顔はいかばかりかこわばってみえた。エレファントマンという歴史的な障がい者に会うのだ。まぁ理解はできなくない。

 おそらく自分もそんな顔をしているはずだ——


 スピロは自分自身もマリアとおなじように、緊張していることに自分でも驚いていた。だが、自分がなぜ緊張しているのかがわからない。ためらいなのか、忌避しているのか、抵抗したいのか、それとも好奇心ゆえなのか。

 この世界でも冷静沈着に事件を分析してきていたはずなのに、恥ずかしいことに、今、自分はなにをすべきなのかすらおぼつかなくなっている。


「お姉さま。コナン・ドイルさんとネルさんをエヴァさん、ひとりにまかせて、大丈夫だったのかい?」

 ゾーイがそのふわふわとした様子を見かねたのか、声をかけてきた。スピロはその気づかいに感謝しながら、きわめて事務的に返事をした。

「ゾーイ。いたしかたありません。あの方はたいへん繊細な方です。あまり大勢で押しかけるわけにはいきません」


 

 ロンドン病院に到着すると、すでに入り口で担当医師のトレヴェスが待ち受けていた。

「フレデリック・トレヴェスです」


挿絵(By みてみん)

 リンタロウは握手をして、自己紹介とスピロたちの紹介をすませると、トレヴェスに案内されるまま、病院内に足を踏み入れた。

「恐縮です。まさか、入り口でお待ちいただいているとは、小生思いもしませんでした」

「いえいえ。ここのところ、上流階級の人々の関心がたかくてですね。ジョンへの面会希望があとをたたないのです。おかげで、すっかりわたしはジョンの案内係ですよ」

 そう言ってトレヴェスがわらった。


「ジョン?」

 セイがスピロに小声で訊いてきた。

「あのトレヴェス医師はメリック様のことを、ずっとまちがえて『ジョン』と呼んでたんです。彼の書いた手記にもその記述があるので、それを原作にした映画はジョン・メリックになってるんです」

「おいおい、とんだマヌケだな。ほんとうに、英国王室お抱え候補の優秀な医者なのか?」

 マリアがトレヴェスに聞こえそうな声で、あげつらった。



 その部屋は病院の地下にあった。不快というわけではなかったが、すこしばかり湿っぽさがかんじられた。換気が行き届いていないのだろう。

「ここがジョンの部屋です。多額の寄付金のおかげで維持しております」

 トレヴェスがリンタロウにむかって説明した。


 ここまできて、スピロは自分が先ほど以上に緊張しているのを感じた。

 覚悟をきめてきているはずなのに、扉いちまいむこうに、自分の人生を変えるかもしれない人物が待っているかと思うと、決意がゆらぐ。



 トレヴェスがドアをあけた。


 部屋の中央にある応接用の椅子に、ジョゼフ・メリックが座っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ