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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第180話 アルバート王子、切り裂きジャック説2


「えぇ。ですからセシル首相は、ヴィクター王子を城に監禁し、アニーを精神病院に入院させ、娘のアリスを救貧院に送り込んだ。残る問題は秘密裏に結婚式をおこなったことを知っている立会人……」


「ま、まさか……」

 スティーブンソンが唖然とした顔で呟いた。

「えぇ。スティーブンソン様。そのまさかです。ガル医師は自分の馬車馭者ジョン・ネットリーとともに、ウォルター・シッカートを巻き込んで、娼婦たちを殺していった、という話です」

「じゃあ、殺された娼婦はみな、そのアニーという女性の結婚式に立ちあっていたというのかね」

「いえ。一番最後に殺されるメアリー・ケリーだけだったそうです」

「では、ほかの女性はなぜ殺されたのかね」

 ワイルドが意味がわからないとばかりに、声をはった。


「木の葉を隠すなら、森のなかに隠せ、です」


「それはどういう意味かね」

「チェスタートンのブラウン神父に出てくる有名な会話です。この続きは、『もし森がないなら森を作るだろう。そしてもし死体を隠したければ、死体の山を築いて隠すだろう』……」

「つまり、殺した理由を探られないために、死体の山を築いたっていうことかね」

「そうです。まぁ、これも元々はエドガー・アラン・ポー様のアイディアで、『盗まれた手紙』のなかで、大切な手紙をもっとも目に付く名刺入れに隠すというトリックがあるのですけどね」

「いやぁ、それはいい。あたしもそのアイディア、流用させていただきますよ」

 コナン・ドイルがメモに走り書きしながら、うれしそうに言うと、マリアが皮肉たっぷりに当てこすりをした。

「おい、もうパクリか。アーサー」

「マリア様。言わないであげてください。コナン・ドイル様は、のちに『ボヘミアの醜聞』でこのアイディアを使っていますからね」


「なんだよ。実際にパクり済みってかい!」


「マリアさん。パクリとかひと聞きがわるいですよ。あくまで参考です」


「そんなことはどうでもいい」

 マリアとコナン・ドイルの馴れ合いに、スティーブンソンがたまらず声を荒げた。

「スピロぉ。この説、まさか本当じゃないんだろうな」


「まさか。この説にはおおきな矛盾が指摘されています。首謀者であるガル医師は、このとき72歳でしたが、脳卒中でからだの自由がきかなかったそうですから」

「そうなのですか?」

 エヴァがおおきな目を見開いていた。

「だって、映画ではずいぶんかくしゃくとしておりましたわ」

「エヴァ様。それは映画ですからね。なによりもこの説は、センセーショナルで興味をひきますから、ほかの小説などでも引用されています。でもあり得なかったと考えるのがただしいでしょう」



「ただ、この説で首謀者とされたウィリアム・ガル医師も宰相ロバート・セシルも、フリーメーソンのメンバーでした。悪魔はこのつながりを利用して、あのミアズマを創造したにちがいありません」


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