表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
650/932

第175話 オスカー・ワイルドのフーダニット3

 ワイルドの問いかけに、ウエルズはばつがわるそうに口ごもりかけた。


「はい……、まぁ……よくわかります。実際、自分は先ほどワイルドさんが言及された『社会主義運動』に傾倒していて、ジョージ・バーナード・ショーという友人に『フェビアン協会』への入会を勧められています」

「ジョージ・バーナード・ショーね。彼は僕とおなじアイルランド出身だと聞いているが、彼は評論家だろう。美術や音楽に造詣が深いようだが、それだけの人物なのではないかね」

 ワイルドがすこし小馬鹿にした口調で言った。その言い方が気に入らなかったのだろうか、スピロがすぐさま意見した。

「ワイルド様。バーナード・ショー様は現時点ではまだ無名ですが、数々の戯曲をものにされてノーベル賞まで受賞されるのです」

「ノー……ベル賞? それはなにかね?」

「ああ、申し訳ございません。この賞は20世紀になって創設されるものでした。ですが、バーナード・ショー様は20世紀を代表する劇作家になる方です」

「ふむ、スピロ。君がそういうから、そうなのだろう。で、ウエルズ君、話を続けたまえ」

「あ、はい。自分は『土地・資本・技能における比較優位から得られる超過利潤は社会的に共有されるべき』というフェビアン協会の『綱領』が魅了されました。これがもし実現されれば、イースト・エンドのような極端な貧困のかたよりは解消されるのではないかと思っているんです……」


「心霊主義的で恥ずかしいのですが、ある意味で『神の啓示』とすら考えていて……」


「いいや、そんなこと、恥ずかしがっちゃあ、いけません」

 ウエルズをすぐさま擁護したのは、コナン・ドイルだった。


 セイは彼が『心霊主義』にかなり心酔していたことを思い出した。スピロに聞いた話では、後年『心霊現象研究協会』に入会し、心霊主義布教のために尽くしたらしい。

 コナン・ドイルの心霊写真も残っているし、妖精のねつ造写真を本物だと言って、大恥をかくような事件もおこしていたが、晩年、体調が悪化するなか、無理をおして心霊主義布教のために尽くした、と知っていれば、その反応は当然だろう。

 

「神の啓示……ですか……」

 ぼそりとスピロがつぶやいた。

「そう言う連続殺人事件もあることはあるんです——」


切り裂きジャックジャック・ザ・リッパーになぞらえられて、|ヨークシャーの切り裂きヨークシャー・リッパーと呼ばれたピーター・サトクリフは、5年間にわたり、娼婦を13人殺害しました。

 その手口は背後から鈍器で殴りつけ、ナイフでめった刺しにするという残虐なもの——

 彼は自分自信を『内に秘めたこの天才を解き放てば国を揺るがし、その精気は人間すべてを圧倒する。この男を眠らせるべきではない』と主張し、『神の啓示』を受けたと主張し続けました」


「神から…… 切り裂きジャックも、もしかしてそういう『啓示』を受けてるんじゃないでしょうか?」

 ウエルズは賛同を求めたが、スピロは首をよこにふった。

「わかりません。マスコミからは、『目のくらむような狂気のエゴの発散』と痛烈に非難されましたが、精神異常をよそおって、罪を軽くしようとしたのではないか、とも言われています」

「んで、罪は軽くなったのかい?」

 

「いえ、結局、終身刑を宣告され、2020年獄中で新型コロナウィルス(COVIDー19)で死亡しました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ