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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第152話 セイの攻撃はまさに旋風のようだった

 スピロにとって、力を持ったセイに守ってもらうということが、これほどこころづよく、そしてこんなにも無力感にとらわれるものだ、とは思いもしなかった。


 セイの攻撃はまさに旋風のようだった。

 

 一陣の風を顔に感じたかと思うと、ミアズマが宙に舞っていた。

 そして一瞬のうちに切り刻まれている。これがどうじに何十本もがふるわれるので、まるで嵐が瞬時に過ぎ去ったかのようだ。


 それだけではない——


 セイはミアズマを討ち取りながら、何本かの剣をスピ口のまわりに浮遊させ、盾のようにして守りも固めてくれているのだ。

 狭い路地での戦いはギリシアの時のように、一撃で何百、何千も倒すということはかなわないが、セイはじつに適確かつ丁寧にミアズマをしとめていた。

 とどめを刺しそこねてピンチを招くようなまねなど、、おのれに絶対に許さないという不退転の意志をかんじる。


 自分が鉄壁に守られてる安心感も手伝って、スピロは目の前のセイの戦いに見惚れていた。

 だがスピ口はそのなかでも、目の端にわずかな異変をとらえた。


 (もや)が薄れている——?。


 さきほどまでとちがって、見通せる距離があきらかに長くなっているし、空にはうっすらだが、朝日の光がさしこみはじめている。


「セイ様!。 霧がはれてきています。どうやら事態が動いたようです」


「ああ、スピロ。そうだね。こちらもミアズマが撤退しはじめてきているんだ」

「すでにメアリー・アン・ニコルズ様の事件の時間はもうすぎています」


「犯行は防げたってことかい?」


「それはわかりません。もし防げたとしても切り裂きジャックをつかまえるか、犯人を特定できていなければ失敗です」

 セイは目の前にいたミアズマを一閃して倒すと、こちらへ駆け足で戻ってきた。


「スピロ、犯行現場へ急ごう」


 そう言うなリ、セイはスピロの手を有無を言わさずつかんで駆けだした。

 突然手をとられてスピロはとまどった。

 セイの手のひらはすこし節くれ立って感じられた。でもそれは指の付け根、指尖球と呼ばれる部位にできた、たこの盛りあがりのせいだとわかった。あれだけ剣をふるったのだ。皮膚が硬くなるのも当然だ。


 だがスピロはうれしかった。


 ちょっぴり武骨を感じるセイの手から、自分を守ってくれる『男』の息吹を、こんなにも直接感じ取れているのだ。ひとの前世の記憶のなかという一種のヴァーチャル世界とはいえ、こんなにも多幸感(ユーフォリア)にひたっていいのか、とつい自問自答してしまう。

 いや、現実の我が身を考えたら、望んではいけないのではないか、とさえ思う。


「スピロ、怖くなかったかい?」


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