第150話 コナン・ドイルとマシュー・バリーは腹を括った
コナン・ドイルとマシュー・バリーが腹を括ったようだった。
エヴァが注意をうながした。
「わたしの銃撃は動きをとめますが、仕留めるわけではありません。どれくらいかはわかりませんが、あまりのろのろしていたらあのバケモノは息を吹き返しますので、ご注意ください」
「えぇっ。ちょっとぉ、今、それ言うかな。なんか覚悟がゆらぐなぁぁ」
「心配すんな。オレがおまえたちのあとを追いながら、とどめをさしていってやるよ」
マリアが胸をはったが、ドイルもバリーも不安そうに顔を見合わせたのが、遠めにすらわかった。
エヴァは抜けるべき正面の通路を再確認した。
通路は直線距離で300メートルほどで、1分もあれば抜けられそうだった。
問題はミアズマの数だけだった。
ミアズマが折り重なるようにして、びっしりと通路を埋め尽くしており、路面には猫の額ほどの隙間もないようだった。しかも路面に脚もかけられない個体は、壁を這い回っている。
エヴァは車体を傾けて、一番手前にいるミアズマに照準を合わせる。
一瞬だけ振り向いて、ネルがどうしているかだけを再確認した。彼女は健気に言いつけを守って目をしっかり閉じたまま、エヴァにしがみついていた。
「撃ちます!」
そう叫ぶやいなや、エヴァはトリガーをひいた。
ガガガガガガガガ……
けたたましい連射音とともにカウルの両端にある、マシンガンの銃口が火をふいた。おびたただしい数の銃弾が一気に地上にむかって吐き出されると、ミアズマたちがバタバタと倒れていった。一瞬にして力をうしない、折り曲げた長い針金の脚で体躯を支えきれず、ドスン、ドスンと地面に落ちていく。
「いまだ。走れっ!」
マリアの号令とともに、倒れたミアズマのあいまをふたりが駆けていく。落ちきっていない浮いた身体の下を抜けたり、細い脚を踏みしめたり、場合によってはミアズマのからだの上を踏みつけながら走っていく。途中、ミアズマの背中に埋込まれた人間の顔を蹴飛ばす勢いで踏んづけたりしていたが、ふたりともそんなことに構いもせず、先を急いでいく。
エヴァはそのふたりのスピードにあわせながら、その奥側にむけて慎重に銃弾を撃ち込んでいく。遅すぎても早すぎてもいけない。
その攻撃には絶妙なタイミングが求められた。
が、走っていくコナン・ドイルとマシュー・バリーのスピードが次第にあがってきて、エヴァの掃討のタイミングがあわなくなってきはじめた。
ミアズマがまだすこし動いているというのに、ふたりは横を通り抜けていきはじめた。「うわぁぁぁぁぁぁ」という悲鳴とも雄叫びともしれない奇声をあげながら走りぬける。
ついには銃弾がまだ着弾したばかりだというのに、ふたりはその上を踏み越えていくほどになった。残りはあと100メートルもない。
こちらが間に合わない。いくらなんでも急ぎすぎだ。
が、その理由がわかった。
マリアだった——。




