第148話 すさまじい衝撃!
エヴァが現場に到着するほんのわずかな時間に、さらにもう一度ミアズマがバラバラと空中に舞った。
すさまじい衝撃!。
空気がびりびりと震える。
ミサイルが街中に着弾したかのようにすら感じる——
眼下にセイの姿を見つけると、エヴァはすぐに声をあげた。
「セイさん!。ジャックは、切り裂きジャックはどうなっていますか!」
その質問に答えたのは、セイのうしろに隠れていたスピ口だった。
「大丈夫です。リンタロウ様、ワイルド様、そしてスティーブンソン様が、ニコルズ様を追いかけています。それにウォルター・シッカートさんを見張っていたフロイト様、ブラム・ストーカー様、そして合流したH・G・ウェルズ様もこちらにむかっています」
「シッカートさんがこちらに向かってきているということですか?」
「はい。これで彼の容疑は強くなりました」
「ゾーイは?。ゾーイさんはどうしたんです」
エヴァが上空からさらに尋ねた。
「ゾーイはホワイトチャペルの入り口で、ミアズマに足止めを喰らっているようです。それよりも、エヴァ様。ネル様は大丈夫でしょうか?」
エヴァは自分の胴体をぎゅっと握りしめている、ネルの手にやさしく手を重ねてから、「ご安心を。耳栓のおかげでなにも聞こえていません」と叫んだ。
セイは周りを取り囲んでいたミアズマを牽制しながら、エヴァのほうへ顔をむけた。
「エヴァ。マリアのほうへ行ってくれないか。こっちはどうとでもなる」
エヴァはセイの頭上の空間から、次々と出現してくる日本刀を見た。
「そのようですね。ではわたしはマリアさんを加勢にいきます」
スピロが一歩前にでると、大きな声で訴えてきた。
「くれぐれもネル様にあの悲鳴を聞かせないように留意願います。それと……上昇しすぎないようにしてください」
「心得ています。ですからこんな低空飛行をしているんですもの」
「エヴァ様も気づいていましたか……」
「ええ。この靄はもしかしたら、結界のようなものかもしれないと思いました。わたしたちを拒むことはできないけど……」
「ネル様の思念を妨げて、我々の未練の力を弱めるかもしれない」
「ええ、その可能性が否定できませんでした」
「さすがです!」
「では行きます!!」
エヴァはすぐにバイクの車体をすこしだけ上へともちあげた。
それを待ちかまえたように、セイが頭上に浮遊している日本刀を一気に正面へとばした。
目の端にミアズマたちが次々と串刺しになっていくのがかいま見えた。
今度は上空に放りあげるのではなく、そのまま路地の袋小路にある建物の壁面に叩きつけようということらしい。
大きな音とともに地面が揺らいだ。
夜空にもうもうと土煙がたちのぼる。安普請の建物の一棟や二棟は跡形もなく崩れ落ちたにちがいない。




