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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第146話 マリアはゆっくりと大剣を引き抜いた

「あぁ、たしかに。ボクはずっと目は離さなかった」

「玄関口じゃなくて、どこかにある裏口を使われたか!」

「そ、そりゃ、まずいじゃないですかぁ。スピロさんに大目玉喰らっちゃいますよ」

「あぁ、たいした失態もいいとこだ!」


「ど、どうするんです。マリアさん」


「こうなったら、スピロたちと合流するしかねぇだろ。本当にコスミンスキーが切り裂きジャックだったら、セイとスピロが見張ってるメアリー・アン・ニコルズんとこに行くンだろうからな」

「では急ぎましょう。ここからそんなに離れていないはずです。走っていけば……」

 ジェームス・マシュー・バリーはそう提案したが、途中でことばを飲み込んだ。


「な、なんだろう。あれは……」


 バリーはいまからむかうべき方角の路地を指さしていた。

 濃い(もや)でその正体は見えなかったが、マリアは手を空中に伸ばして、手のひらのなかに、まばゆく光る暗雲を呼びだした。


 こころあたりしかなかった。


 カチカチと石畳を鋭いもので打ち鳴らすような音——。

 中空に渦巻く暗雲のなかに手を突っ込むと、ゆっくりと大剣を引き抜いた。


 靄のなかから、何体ものミアズマが姿をあらわした。からだの横から何本も突き出した細くて長い足、三角錐を想像させるゆがんだ体躯。前回と寸分たがわぬ異様な姿がそこにあった。


「あ、あれはなんですぅぅ」

 コナン・ドイルの声が裏返った。

「心配するな。アーサー。あれはオレたちに用事があるバケモノで、オレたちが『ミアズマ』と勝手に呼んでるヤツだ」

「あ、あたしたち、あいつに喰われちゃうんですか。そ、そんなの嫌ですよ」

「そ、そうだとも……、マリア。こんなバケモノに襲われるなんて、ボクは聞いていない」

「あぁ、そうだとも、ジェームス。聞かせてないからな」

「ど、どうするつもりなんだ……」


 マリアは大剣を一度ぶんと振ってから言った。

「さっき言った通りだ。セイとスピロたちと合流する。このお邪魔キャラをぶっ倒してな」

「ぶ、ぶ、ぶっ倒すって、マリアさん。あんたそんな無茶苦茶言われても、あたしのパンチごときじゃ、なんの役にも立ちませんからね」

「アーサー、心配するな。はなっからあてにしてねぇ」


「それにあいつらは、オレの剣の切れ味を試すていどくらいにしか役に立たねぇ」



 その瞬間、わらわらと一気に数体のミアズマが跳びかかってきた。

 コナン・ドイルとマシュー・バリーの悲鳴らしきものが聞こえたが、それが本当にそうだったのか確かめるよりもはやく、マリアはそのミアズマを全部切り捨てていた。あたりにバラバラになったミアズマの破片が、ベチャベチャと飛び散る。

 それをみて、ドイルとバリーが悲鳴をあげた。


「ふたりとも耳をふさいどけ!。こいつらが断末魔の悲鳴をあげる」



「けっこう耳障りなんだよ。これが」


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