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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第141話 スピロ、H・G・ウェルズに懇願する

「あのぉ……」


 ウォルター・シッカートを尾行して、ホワイトチャペル界隈までやってきたゾーイは、暗がりからふいに声をかけられておどろいた。

 フロイトとブラム・ストーカーはゾーイのうしろについてきてはいたが、道中ずっと会話に夢中で、自分たちにむけられた声に反応すらしなかった。


 街角の暗がりから現われたのは、H・G・ウェルズだった。


「ウェルズさんかい。おどかしっこはなしにしてくれないかい?」

「ああ、ゾーイさん、ごめんなさい。でも自分だって、こんなところでたったひとり、見張りをさせられて、かなり心細かったンですからぁ」

 そう泣き言めいたことを聞かされて、ゾーイは彼に与えられた役割を思いだした。




「では、たいへん申しわけないのですが、ウェルズ様。おひとりでホワイトチャペル駅周辺を見張っていただけますか?」


 そのとき、スピロはとても申し訳なさそうに、ウェルズに言った。

「じ、自分ひとりでですかぁ」

「えぇ。スティーブンソン様がどうしてもワイルド様と一緒でないと、承服できないと申すものですから」

「あぁ、そうだとも。俺様は成功をおさめた作家なんだぞ。そんな作家志望の学生なんぞと組めるものかね。まぁ、作品はあとで見てやってもいいがな」

「弱りましたね。ワイルド様はわたしとセイ様と一緒でないと協力しないと、言っておりますし……。これでは手助けされてるのか、足をひっぱられているのか……」


 ウェルズは弱り切ったスピロの様子をみて、気をつかってくれた。

「スピロさん。わかりましたよ。自分はひとりで見張りをやります。あんな高名な先生と二人っきりっていうのは、自分もさすがに居心地がわるいですから」

「ありがとうございます。ではお願いします。外部からホワイトチャペルへはいってくる、怪しい人がいたらチェックしておいてください」

「怪しい……ですか。真夜中にあんな街にやってくるヤツって、たぶんみんな怪しいと思うンですけどね」

「わかっています。ですが容疑者と目される人物で、所在を確認できなかった人物が数人います。今回の事件でわたしたちは犯人を、とりおさえられると信じていますが、もしうまくいかなかった場合、その怪しい人物が重要になります。すくなくともニコルズ様の事件のとき、現場にいたというわけですからね」



「わかりました。自分はまだ学生ですし、文士の先生方と同列に扱ってくれっていうのもおこがましいです。捜査の一員に加えていただけるだけで光栄です。怪しいヤツらをかたっぱしからチェックしますよ」


 そう言ってスピロの懇願をH・G・ウェルズはこころよく引き受けてくれたのだ。

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