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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第140話 シッカートこそが切裂きジャックなのでは?

 セイはピーターの姿を目で追いかけたが、(もや)に隠れてすぐに見えなくなった。

 ふと、ワイルドたちのほうへ目をむけると、彼らはまだ目でピーターのほうに目をむけたままだった。彼らはまだ見えているというのが、あらためて確認できた。


 やがてピーターの姿が見えなくなると、ぼそっとワイルドが言った。

「我々はみんな(どぶ)の中にいるようなものだ。でも、そこから星を眺めている者だっているのだな」


 自分たちだけが不利な状況に置かれている。ワイルドたちの目を借りるしかない——。

 セイはスピロにそう提案しようとしたが、スピロはピーターのほうを見送っている様子もなく、なにかに気をとられているように中空に目をむけていた。

 スピロはほんの数秒間身じろぎもせずにいたが、ふいにくるりと振り向いた。


「セイ様。ゾーイから連絡がはいりました。ウォルター・シッカート様がホワイトチャペル方面にむかっているそうです」

「ほんとうかい?」

「今、ゾーイと一緒にブラム・ストーカー様とフロイト様が尾行しながら、こちらへむかっています」

「シッカートが動き出したというのなら、やはり彼こそが切り裂きジャックなのだな」

 ワイルドの口調は高揚感にあふれていた。

「ワイルド様。まだ決まったわけではありません。可能性がすこしあがっただけです」

「いやいや、スピロ・クロニス。決定だろ。こんな真夜中に家からでて、このイーストエンドを目指す理由がほかにあるかね」

 スティーブンソンも興奮のあまり声をいくぶん荒げた。だがリンタロウは軍人らしく、冷静な口調で別の可能性を示唆(しさ)した。

「ワイルドさん、スティーブンソンさん。『()いてはことを仕損じる』と、わが日本のことわざにあります。まずは落ち着きましょう。シッカートさんはもしかしたら、単純にこの街に街娼をあさりにきているだけかもしれませんよ」

 ワイルドはおもしろくなさそうに鼻を鳴らした。

「ふん、まぁその可能性はないとは言い切れん。噂では貴族のなかにも、この街にお忍びで通う者もいるときくからね」

 

 そのとき、スピロが大声を発した。

「この街にはいってこれない?。どういうことです。ゾーイ!」

 セイはその剣幕に驚いた。スピロがこれほどまでに声を荒げるというのでは、ただ事ではないということだ。スピロの目がおおきく広がる。

 スピロはテレパシーで伝えられているゾーイのことばに耳をそばだてながら、セイになにかを伝えようとした。

 だが、セイは前に手をつきだして、それをさえぎった。


 スピロに言われなくても、なにが起きているかがわかったからだ。


 それは(もや)に隠れて、姿をみることはできなかったが、思いだしたくもない、耳障りなカサカサという音ですぐにわかった。

 

 その音はあたりを埋め尽くすように、いたるとろから聞こえてきはじめた——。

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