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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第139話 オスカー・ワイルド、ピーターに切れる

「ふむ、リンタロウ。君は腹が立たないのかね」


「ワイルドさん。この子はふつうの子供よりすこし早熟なんです。小生もおなじタイプだったからわかります。小生なんぞは、すこしでもはやく大学にはいりたくて、2歳年齢をごまかして、12歳で『第一大学区医学校(現・東京大学・医学部)』の入校試問をうけましたからね」


「12歳で大学かね。リンタロウ、貴様、なかなか優秀だったのだな」

 スティーブンソンは感心しておおきくうなずきながらも、ピーターへの文句を続けた。

「ピーター、貴様はもしかしたら、リンタロウの言うように早熟なのかもしれん。だがおとなをからかわんことだな。だいたい、貴様のような子供が路上をうろついていい時間でも場所でもない。さっさと家に帰って寝ろ!」

 ピーターはスティーブンソンを正面から見すえながら、指を曲げて地面を指さしてみせた。

「ここだよ」


「ここ?。ここってなんだ?」

「スティーブンソンさん、ここがぼくのねぐらさ」

「ピーター、そりゃ、どういう意味なのかい?」

 リンタロウが目をまるくして、ピーターに尋ねた。

「いやだなぁ。ぼくは『ストリート・チルドレン』だぜ。家どころか、定宿(じょうやど)すらありゃしないさ」

「ふん、ストリート・チルドレンかね。じゃあ、路上で眠るしかないね」

 ワイルドがいくぶん侮蔑(ぶべつ)の色をこめて言い放ったが、ピーターはわざとらしく驚いてみせた。


「まさか!。路上で眠るわけないじゃないか」


「な、なんだ、ピーター。やっぱりそうなんだ」 

 リンタロウがすこし安堵したように言った。

「だって、今は夜だよ。夜なんかに路上で寝てたら、警察官どもにしょっぴかれちまうよ。だからぼくらストリート・チルドレンは、夜は寝ないきまりなのさ」


 あっけらかんとしたピーターのことばに、ワイルドとスティーブンソンは二の句が告げずにいた。リンタロウは目の前の少年を見つめていられなかったのか、目をそらすようにセイのほうに目を向けてきた。

 セイは肩をすくめてから、ピーターに言った。


「ピーター、ここまでありがとう。あとはぼくらの仕事だ。きみはもうマイケルやジョンのところに戻ったほうがいい」

 ピーターは握りしめていたコインを、手をひらいて確認した。


「そうだね、セイ。駄賃はたっぷりもらったから、今日のところはここで失礼するよ。またなにか用事があったら、ぜったい声をかけてくれよ」


「そうですね。ピーター様、あなたのお仕事には大変満足しております。もし困ったことがあったら、かならずお声がけします」


 ピーターはいたずらっぽい笑みをスピロとセイのほうにむけて「かならずだよ!」というなり、ニコル・ストリートのほうへ駆けだしていった。

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