表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
606/932

第131話 文士たち再集結

 遠慮がちのノックをしたのは、家主のターナー夫人だった。


「スピロさん、来客ですわよ」

「どなたでしょう」

「知りませんわよ。殿方たちが何人もきておりますよ」

「何人も?」

 大家のターナー夫人はスピロに顔を近づけると、押し殺した声で、それでいて部屋中のみんなに聞こえる音量で言った。


「あーたたち、ここでいかがわしい商売をしているんじゃありませんよね」


 スピロが返事しあぐねていると、階段をあがってきたその客人たちが、大家のうしろから、姿を見せた。


「やぁ、スピロどの。このオスカー・ワイルド、本日が待ち遠しくてしかたなかったよ」

 いやにめかし込んだ服で現れた、オスカー・ワイルドがにやりと笑った


「待ち遠しい?。待ちかねたなんてもんじゃないぞ、オスカー。俺様は南の島の購入を延期してまで、この糞だめのようなロンドンに残っているんだよ。それもこれも『ジキル博士とハイド氏』以上の作品をものにできると思ったからだ。たのむから、無駄足に終わらせないでくれよ」

 恨めしげに溜め息をつく、スティーブンソンを横目にしながら、フロイトが鼻を鳴らした。


「ふん。相変わらず金のことばかりかね。これだから文士というものは好きになれん。わが輩は純粋に、精神異常者による連続殺人の研究がしたいのだ。そのためにわざわざドイツから舞い戻ってきたのだよ」


「ロバート、フロイト先生のおっしゃる通りだ。ボクなんぞは、この未来人が告げた『ピーター・パン』なる作品のヒントのひとつでも、と思って参加している。あまり前のめりになってもしかたないさ」


 マシュー・バリーがスティーブンソンを諭すように言ったが、ブラム・ストーカーが不満そうに、その大柄なからだを揺らした。

「ジェームス、あんた余裕だな。まぁ、流行作家さんだからな。だが、私のような貧乏劇団員は、そんなへらへらしてられない。この事件を通して一日でもはやく『ドラキュラ』なる作品のヒントを得たいと考えている。私はいつまでも妻フローレンスに肩身の狭い思いをさせたくないからね」

 ブラム・ストーカーの決意のこもったことばに、オスカー・ワイルドが反応した。


「ほう、エイブラハム。それは健気な心がけだ。僕も微力ながらでも協力させてもらうよ。」

「オスカー、ありがとう」

 

 スピロがみんなにことばをかけた。

「お待ちしておりました。皆様。来ていただけると思っておりましたよ」

 実際にはうれしい誤算にちかいものだったが、そんなことはおくびにも出さず、しれっとその場の主導権を自分のほうへひきよせた。


「100年後まで名を残される文士や研究者が、これだけの事件に興味を惹かれないことなどないでしょうからね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ