表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
605/932

第130話 武道の達人 森鴎外

「あたしもそれに含まれてますか?」


「当たり前だろうが。アーサー。真夜中の街を見まわろうかっていうんだ。ひとりでも頭数は欲しいからな」


「ええー、えーー。いや、嘘でしょ。だ、だってあのイースト・エンドでしょう。あんな物騒な街、あたしのような田舎モンにはちょっとハードルが高いですよ。しかも真夜中なんでしょう。まかり間違えてあたしがその『切り裂きジャック』に刺されたらどうするんです」


「心配すんな。切り裂きジャックは、男を襲わねぇんだ」

 マリアはそうぶっきらぼうに斬って捨てたが、ドイルはおびえた様子でリンタロウに助けを求めた。

「そんなこと、わかんないでしょう。殺すのは女性でも、犯行を目撃されたら男、女関係なく襲いかかるでしょう。ねぇ、リンタロウさん」

 いつものようにドイルがリンタロウに同意を求めた。


「いえ、小生のことはご心配なく。自分の身は自分で守れますので」

「そ、そりゃ、どういうことですぅ?」


「小生は津和野藩の『養老館』という藩校で、いろいろ武芸(マーシャル・アーツ)を体得しておりますゆえ、女性を(あや)めるような畜生を蹴散らすくらいぞうさもございませんよ」


「そうなんですかぁ……」


 味方がいなくなってドイルの表情が、たちまち意気消沈していく。

 セイはちょっとかわいそうだなと思いつつも、リンタロウの体得した武術に興味をひかれた。

「リンタロウさんは、どんなものを学ばれたのですか?」


「うむ。剣術、槍術、弓術、馬術、柔術などです。セイ殿はなにかやられてますか」


「ぼくはボクシング、空手、剣道、それにいくつかの外国の武術を……」

「ほう、すばらしいですね。小生はたしなむ程度で、それほど強いわけでは……」

 リンタロウはそう謙遜(けんそん)したが、マリアが茶化すようにはやし立てた。

「うそつくな。リンタロウ。作家の太宰治がすげー強かったと、述懐しているぞ。50歳頃でも、軍隊の宴会などで無礼者には敢然(かんぜん)と腕力をふるったってな」

「リ、リンタロウさん、そんなに強いンですかぁ」


 コナン・ドイルが驚き半分、心細さ半分という口調で呟いたが、今度はそれにスピロが異論をはさみ込んできた。


「コナン・ドイル様。あなたも強いんじゃないですか。あなたスポーツ万能で、高校時代はクリケット部の主将をつとめてたそうですね。それに大学ではボクシングとラグビーをやっていた。しかもだれかれ構わず、試合をやりたがるほどだったと聞いていますよ」

「あ、いや、そうなんですが。あたしゃ、ナイフをもったヤツを相手にするほど度胸があるわけ……」

 なおも弁明しようとしたが、リンタロウに力強く背中を叩かれて、ことばが尻切れになった。

「いやぁ、すごいじゃないですか。アーサー。その体格はなにかやっていると思いましたよ」


「勘弁してくださいよぉ。真夜中のイーストエンドで、ナイフ持った相手とひとりで格闘なんて、あたしゃごめん……」


 コンコン——。


 なおもコナン・ドイルは抗弁しようとしていたが、突然のノックの音にまた尻切れになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ